徳島県は、徳島新聞社「旧印刷センター」を改修する「awa臨港プロジェクト」の設計競技で、最優秀作品にジオ-グラフィック・デザイン・ラボ(大阪市)、泉設計室(徳島県鳴門市)、構造計画研究所(東京・中野)の3社JV(共同企業体)による提案「おきのすインドアパーク 全ての世代が徳島に住み続けたくなる、魅力的な余白」を選定した。優秀作品は御手洗龍建築設計事務所(東京・目黒)とかたちとことばデザイン舎(徳島県佐那河内村)JVによる「もくちくの森―地域の循環を促すプラットフォームのかたち―」だった。
徳島市東沖洲(ひがしおきのす)にある「旧印刷センター」は、徳島新聞社の印刷工場として使われてきた施設だ。同工場は2019年12月、生産設備の老朽化のため、同市北島町に移転。建物は築後20年程度と比較的新しく、新耐震基準にも適合していることから、有効利用が望まれ、徳島新聞社は、公益性の高い用途にすることを目的として徳島県に寄付した。
「awa臨港プロジェクト」は、同センターを活用するリノベーション事業だ。徳島県はコンペに際して、既存建築物の特性を生かし、以下に配慮した「用途」および「具体の設計案」を提案することを設計条件として挙げている。
(1)県民の生活向上(健康、買物、学習など)に貢献するもの、(2)収益を確保できるもの。加えて、有事には、支援物資の中継拠点として利用できるものとし、屋上にヘリポートを設置することとしている。
コンペには、34件の応募があり、0pen A代表の馬場正尊氏を委員長とする審査委員会は、20年11月12日に行った1次審査で5作品を選んだ。2次審査は21年1月15日、公開プレゼンテーション形式で開催し、最優秀作品、優秀作品、入賞作品、各1点を選定した。
ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ代表の前田茂樹氏は、「応募に当たってJVチームの泉設計室代表の泉真治さんと共に、複数の事業候補者や友人から直接話を伺った。同時に徳島市総合計画のアンケート結果などを読み込み、自分が運営する目線でリサーチした」と語る。リサーチの結果、日常利用と収益性の両立が可能な提案として着目したのが、楽しみながら社会の仕組みなどを学べるエデュテインメント施設だ。併せて、スポーツ施設や子育て支援施設などを設け、相互に人を循環させていく。
最優秀作品の「おきのすインドアパーク」は、 1階がインドア運動場、2階がエデュテインメント施設、3階が小規模保育園と子育て支援センター、4階および屋上がレストランという構成だ。前田氏は「収益性にも学びの要素が大事だと思い、エデュテイメント施設を含む入居企業の相互利益を高める仕組みを採り入れた」と説明する。
例えば、レストランと保育園は単体用途では収支が厳しい。「おのおのの事業について収支計算を行った上で、小規模保育園の昼食をレストランが提供する形にして、レストランの平日の安定収入を確保するという解決策を事業候補者との話し合いから導いた」(同氏)
今後の取り組みについて、前田氏は「子どもたちがこども会議を開いたり、中高生も運営に参加できたりするような仕組みをつくりたい。また、県民が日々更新していく様々な活動を建築デザインがフォローしていくような環境づくりを目指す」と話している。