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 大分県は、大分空港海上アクセス旅客ターミナルの設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、最優秀者に藤本壮介建築設計事務所(東京・江東)と松井設計(大分市)の2社によるJV(設計業務委託共同企業体)を選定した。次点者は坂茂建築設計(東京・世田谷)と東九州設計工務(大分市)のJVだった。 

大分市側ターミナルのイメージ。上屋の規模は地上3階建て、延べ面積1495m2。海に向かい、緩やかな勾配で上昇していく外観は、雄大な別府湾岸になじみつつ、街のランドマークとなる(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
大分市側ターミナルのイメージ。上屋の規模は地上3階建て、延べ面積1495m2。海に向かい、緩やかな勾配で上昇していく外観は、雄大な別府湾岸になじみつつ、街のランドマークとなる(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
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 大分空港は、県北東部、国東(くにさき)半島の沿岸海域を埋め立てて造成した空港だ。ほぼ南北に延びる滑走路は、大型旅客機も運用可能な3000mの長さを持つ。ただ、陸路で県中心部へ向かうには別府湾を迂回する必要があり、所要時間が高速バスで約60分と、アクセスの悪さが指摘されてきた。

 航空需要を取り込み、地方創生を推進するために、県が取り組んでいるのがホーバークラフトを使った「海上アクセス」の導入だ。鉄道などの陸路と違って、大分市街と空港を直線で結ぶことで大幅な時間短縮効果を期待できる。

提案書。伝統工芸品、特産品、郷土料理、食材など、大分の様々な魅力と巡り会うターミナル空間を提案した(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
提案書。伝統工芸品、特産品、郷土料理、食材など、大分の様々な魅力と巡り会うターミナル空間を提案した(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
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 こうした状況を踏まえて、県は大分市側のホーバークラフト発着地として西大分地区を選定し、空港側と併せて2カ所にターミナル整備を行う計画を立てた。同空港については、県と海外企業が提携し、航空機から人工衛星を打ち上げる「水平型宇宙港」として活用する事業も進めている。

大分市側ターミナル断面図。施設を訪れた人々は緩やかなスロープに導かれて、展望台へと足を運ぶ。高さ12m、全方向に開けた展望台では、別府湾への眺望を確保し、ホーバークラフトの出入港の様子をすぐそばで見ることができる(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
大分市側ターミナル断面図。施設を訪れた人々は緩やかなスロープに導かれて、展望台へと足を運ぶ。高さ12m、全方向に開けた展望台では、別府湾への眺望を確保し、ホーバークラフトの出入港の様子をすぐそばで見ることができる(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
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 最優秀者に選ばれた藤本壮介建築設計事務所・松井設計JVの案は、大分市側と空港側、2つのターミナルを同じデザインコード(意匠上の約束事)で設計し、大分県の玄関口となる建築をつくる。アジア初の宇宙港を目指す空港の象徴として、空へと上昇していく外観とし、屋内には、大分県のアイデンティティーでもあるスギ林のような散策性の高い空間を演出する。

天井高を十分に確保した、全面ガラス張りの待合スペース。大分の原風景ともいえるスギ林のような空間は、地域の人たちにとっては、街のリビングのような場所となり、県外・海外からの来訪者に対しては、地域材の魅力を伝え、大分県ならではの空間を演出する(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
天井高を十分に確保した、全面ガラス張りの待合スペース。大分の原風景ともいえるスギ林のような空間は、地域の人たちにとっては、街のリビングのような場所となり、県外・海外からの来訪者に対しては、地域材の魅力を伝え、大分県ならではの空間を演出する(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
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 最優秀者案について、選定委員会は「西大分地区のベイサイドエリア一帯と調和する外観と敷地計画となっており、周りの場所の魅力を感じさせる新たなランドマークの提案」と評価。「特に、ターミナルは、宇宙港となる大分空港を象徴し、なだらかに空へと向かって上昇する外観の下、大分県の原風景であるスギ林をイメージした屋内・屋外スペースが計画され、見る人が思わず足を運び、美しい別府湾を感じたくなるような姿が意図されている」と講評した。

大分市側ターミナル配置図兼1階平面図。ホーバークラフト乗降場からバス・タクシー乗り場、駐車場までを1枚の大屋根でつなぐことで、動線を明確にし、スムーズな乗り換えを実現する。屋根下のオープンスペースは、ホーバークラフト利用者だけでなく、地域の人がふらっと立ち寄り、滞在するなど、日常的な利用も想定している(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
大分市側ターミナル配置図兼1階平面図。ホーバークラフト乗降場からバス・タクシー乗り場、駐車場までを1枚の大屋根でつなぐことで、動線を明確にし、スムーズな乗り換えを実現する。屋根下のオープンスペースは、ホーバークラフト利用者だけでなく、地域の人がふらっと立ち寄り、滞在するなど、日常的な利用も想定している(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
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 さらに、「公共交通と一般車両の動線が合理的に区分され、2次交通への円滑な乗り換えができるなど、利用者に優しいターミナルとなっており、総合的に最も優れた提案と判断した」と選定理由を挙げている。

空港側ターミナルの外観イメージ。上屋は平屋建て、延べ面積450m2。緩やかに上昇する大屋根スロープは展望機能を兼ねており、大分空港の飛行機の発着を望むことができる(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
空港側ターミナルの外観イメージ。上屋は平屋建て、延べ面積450m2。緩やかに上昇する大屋根スロープは展望機能を兼ねており、大分空港の飛行機の発着を望むことができる(資料:藤本壮介建築設計事務所・松井設計JV)
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