大分県は、大分空港海上アクセス旅客ターミナルの設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、最優秀者に藤本壮介建築設計事務所(東京・江東)と松井設計(大分市)の2社によるJV(設計業務委託共同企業体)を選定した。次点者は坂茂建築設計(東京・世田谷)と東九州設計工務(大分市)のJVだった。
大分空港は、県北東部、国東(くにさき)半島の沿岸海域を埋め立てて造成した空港だ。ほぼ南北に延びる滑走路は、大型旅客機も運用可能な3000mの長さを持つ。ただ、陸路で県中心部へ向かうには別府湾を迂回する必要があり、所要時間が高速バスで約60分と、アクセスの悪さが指摘されてきた。
航空需要を取り込み、地方創生を推進するために、県が取り組んでいるのがホーバークラフトを使った「海上アクセス」の導入だ。鉄道などの陸路と違って、大分市街と空港を直線で結ぶことで大幅な時間短縮効果を期待できる。
こうした状況を踏まえて、県は大分市側のホーバークラフト発着地として西大分地区を選定し、空港側と併せて2カ所にターミナル整備を行う計画を立てた。同空港については、県と海外企業が提携し、航空機から人工衛星を打ち上げる「水平型宇宙港」として活用する事業も進めている。
最優秀者に選ばれた藤本壮介建築設計事務所・松井設計JVの案は、大分市側と空港側、2つのターミナルを同じデザインコード(意匠上の約束事)で設計し、大分県の玄関口となる建築をつくる。アジア初の宇宙港を目指す空港の象徴として、空へと上昇していく外観とし、屋内には、大分県のアイデンティティーでもあるスギ林のような散策性の高い空間を演出する。
最優秀者案について、選定委員会は「西大分地区のベイサイドエリア一帯と調和する外観と敷地計画となっており、周りの場所の魅力を感じさせる新たなランドマークの提案」と評価。「特に、ターミナルは、宇宙港となる大分空港を象徴し、なだらかに空へと向かって上昇する外観の下、大分県の原風景であるスギ林をイメージした屋内・屋外スペースが計画され、見る人が思わず足を運び、美しい別府湾を感じたくなるような姿が意図されている」と講評した。
さらに、「公共交通と一般車両の動線が合理的に区分され、2次交通への円滑な乗り換えができるなど、利用者に優しいターミナルとなっており、総合的に最も優れた提案と判断した」と選定理由を挙げている。