静岡県は、「新県立中央図書館」の設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、最優秀技術提案者にシーラカンスアンドアソシエイツ(CAt、東京・渋谷)とアイダアトリエ(東京・新宿)、日建設計名古屋オフィス(エンジニアリング、名古屋市)の3社JV(設計企業体)を選定した。次順位は妹島和世建築設計事務所(東京・江東)だった。
新図書館は、JR東静岡駅前南口広場に隣接した県有地(約2万4300m2)に建設する。敷地東側を、緑地広場を含む施設計画エリア(約9700m2)とし、西側を駐車場エリア(約1万4600m2)とする。延べ面積約1万9600m2のうち、約1万5100m2は書架や閲覧席、児童室、学習室など従来の図書館機能、約4500m2は情報発信コーナーやオープンコラボレーションスペース、多目的ホール、ラボなど新しいタイプの図書館としての機能を整備する。
CAt・アイダアトリエ・日建設計(エンジニアリング)JVによる提案は、図書館の機能を、人々が多様な情報にアクセスする権利を保障する「知のサンクチュアリ(保護区)」と位置付ける。グラウンドレベルからつながる低層部には、誰でも入りやすく、おおらかで明るい、にぎわいに満ちた「協働・学び合いの空間」を配置し、上階にいくにつれて、知を探求するための比較的クローズドな個人空間へと変化する構成だ。
家具や仕上げには、静岡の木材を積極的に活用し、周囲に張り出すテラスには県や市、町、それぞれの地域を代表する植物による植栽を施す。内部機能とテラスが連携することで生まれる多様な活動を、イベント情報としてWebなどで発信し、人々の参加を促すことを提案している。
審査講評によると、「最も優れた技術提案で総合的に優れている点や取組態勢など」を評価。さらに、以下のように講評した。「図書館としての構造耐火や経済性から公募資料で強要しなかったにもかかわらず『天竜杉のハイブリッド木質構造の採用』に努力したいと記してあることをはじめ、静岡の気候にあった外読書空間と内部との一体化や、静岡県を代表する植物(旧東海道、三保)の松林など、この場からの歴史や地域性を捉え快適さと関わるランドスケープデザインの導入など、静岡県の図書館をつくるという意思が全体に貫かれていた。また審査時、発表者の明確に話す姿勢から、これから設計してゆくのに大切な“コラボレーションのためのコミュニケーション”も重要ということを併せ考えて決定した」