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 新潟県小千谷市(おぢやし)は、旧小千谷総合病院跡地整備事業の設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、最優秀提案者に平田晃久建築設計事務所(東京・港)を選定した。優秀提案者はMARU。architecture(マル・アーキテクチャ、東京・台東)だった。 

最優秀提案者の技術提案書の一部。まち・人・資料の総体である「小千谷のコト」は時間の中でダイナミックに変化する。この変化を表現し、増幅するために、「フロート(Float)」「アンカー(Anchor)」「ルーフ(Roof)」 を組み合わせた動的な建築を提案した(資料:平田晃久建築設計事務所)
最優秀提案者の技術提案書の一部。まち・人・資料の総体である「小千谷のコト」は時間の中でダイナミックに変化する。この変化を表現し、増幅するために、「フロート(Float)」「アンカー(Anchor)」「ルーフ(Roof)」 を組み合わせた動的な建築を提案した(資料:平田晃久建築設計事務所)
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 旧小千谷総合病院は、小千谷市の中心市街地である本町1丁目に立地し、病院としての役割を果たすだけでなく、にぎわいや交流の創出にも寄与してきた。旧小千谷総合病院跡地整備事業は、同病院跡地に図書館を核とした複合施設を整備し、中心市街地における「にぎわい・交流・憩いの創出」を実現するのが目的だ。

 プロポーザルの仕様書では、施設全体の整備方針として、拠点性や再生可能エネルギー導入可能性の検討などに加えて、「実空間と情報空間の融合による新しい情報環境の整備」を挙げている。

情報空間では、資料は多様なリンクによってひも付けられている。ここでは、可変的な資料配置によって、「小さな資料のまとまり」を時系列の中で多様に変化させ、情報空間と実空間を積極的に関連づけることを提案している(資料:平田晃久建築設計事務所)
情報空間では、資料は多様なリンクによってひも付けられている。ここでは、可変的な資料配置によって、「小さな資料のまとまり」を時系列の中で多様に変化させ、情報空間と実空間を積極的に関連づけることを提案している(資料:平田晃久建築設計事務所)
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 同仕様書では次のようにうたっている。「ICT(情報通信技術)の進展によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、および新型コロナウイルス感染症など新たな感染症による社会状況の変化に対応した未来志向の『暮らしのリ・デザイン』という観点から、本事業における、実空間(建築)と情報空間(デジタル)の融合は、公共施設にとっても、図書館にとっても、極めて重要な課題である。デジタル情報社会の未来を想定し、地域社会における新しい情報環境の整備を進めること」

 最優秀提案者に選ばれた平田晃久建築設計事務所の提案は、「フロート(Float)」「アンカー(Anchor)」「ルーフ(Roof)」 を組み合わせた動的な建築だ。3つのキーワードはそれぞれ次のような役割を持つ。

フロート:書籍や郷土資料、歴史的文物のレプリカなど、様々な資料を載せた可動の家具を「フロート」と呼ぶ。情報空間の資料ネットワークへのアクセスポイントでもあり、スマートフォンなどで資料のリンクを読み込むことができ、実空間と情報空間を横断した情報探索やコミュニケーションを誘発する。

アンカー:時間の中で、すみ分けられるコミュニティーのための箱。開架書架・閉架書架、レクチャーホール、カフェなどの店舗、郷土資料展示室、音楽スタジオ、雪室貯蔵室付きポップアップストア、街の店舗のサテライト等々、それぞれの特性を持った箱が、場の特性を共有する複数の活動によってすみ分けられる。「アンカー」 は将来的に、まちへも広がる。

ルーフ:季節ごとのすみ分けを顕在化させる骨太なプラットフォーム。小千谷の積雪に耐えるフラットな「ルーフ」は、雪のない季節には群衆や設営車が載せられる多様なイベントのプラットフォームになる。

人通りとにぎわいがまちに開かれたプラットフォームのイメージ。小千谷の重い雪を支えるフラットな屋根は、雪のない季節には群衆や設営車が載せられる多様なイベントの広場になる。おおらかでフラットな「ルーフ」の下に、「アンカー」や「フロート」がつくり出す様々なスケールのにぎわいが連続する(資料:平田晃久建築設計事務所)
人通りとにぎわいがまちに開かれたプラットフォームのイメージ。小千谷の重い雪を支えるフラットな屋根は、雪のない季節には群衆や設営車が載せられる多様なイベントの広場になる。おおらかでフラットな「ルーフ」の下に、「アンカー」や「フロート」がつくり出す様々なスケールのにぎわいが連続する(資料:平田晃久建築設計事務所)
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 審査講評では、「第1次審査では、『フロート』『アンカー』『ルーフ』を組み合わせた動的な建築の提案について、空間的な可能性や新しさにおいて高く評価した。実空間と情報空間の融合においても、新しい形態、新しい仕組みづくりにチャレンジしようという強い意志が、技術提案書や対話にも表れていた」とした。ただ、「フロート」については、「レールの機構への不安など、乗り越えるべき課題も第2次審査の中で見えてきた」としながら、「こうした課題については今後、十分に対話・検討を行っていく必要があると考えるが、それに応えていただけるチームであると感じた」と講評している。