茨城県日立市は「常陸(ひたち)多賀駅周辺地区整備事業」のデザイン監修者を選ぶ公募型プロポーザルで、マウントフジアーキテクツスタジオ(東京・渋谷)を最優秀者(デザイン監修者)に選定した。次点者は湯澤建築設計研究所(川崎市)、まちむらスタジオ(東京・目黒)、ON(大井裕介+中坪多恵子、川崎市)の3社によるJV(設計共同体)だった。
常陸多賀駅周辺地区では、東西自由通路や駅舎、東口広場など中核施設の整備に当たり、多賀地区の中心となる“まちの顔”にふさわしい機能性や調和のあるデザインが求められている。また、並行して活用法を検討している駅西側低未利用地(市有駐車場など)の一体的・連続的な土地利用転換と併せて、にぎわいの相乗効果を生み出す整備が期待されている。
デザイン監修者の業務内容は、駅周辺地区全体の全体計画ビジョンの策定、デザインコンセプトとデザインの検討、意匠部門の統括者としてのデザイン指導、調整の監修など。企画提案書では、次の3テーマに対する提案が求められた。
(1)人々が集い、交わる魅力的なにぎわい空間の創出、(2)誰もが暮らしやすい良質な生活空間の創出、(3)多様な担い手の共創による持続可能なまちづくり。
マウントフジアーキテクツスタジオによる案は、「on the table」がテーマ。様々な背景を持った人々や交通、情報、文化資源が交差する駅前空間を起点に、常陸多賀ならではの文脈を共有するプラットフォームとして「on the table」という概念を提案した。
「テーブル広場」(西口の市有地駐車場街区)、駅舎、自由通路、「よかっぺテーブル」、東口の「スリバチ広場」、東西の「交通広場」などの各機能を小さな家具スケール(Sテーブル)から大きな建築スケール(XLテーブル)まで、様々なサイズの「テーブル」を組み合わせて構成する。「テーブルの集まり」として歩行者動線・空間を計画することで、程よいスケールの都市計画を実現する考えだ。
審査講評では、「コンセプトとなるテーブルというキーワードが、様々な機能や規模に対応できる許容性を有しており、また、駅を中心に距離圏と時間軸で示したまちづくりの取り組み方針についても、中・長期的な視野を持ちながら、持続的なまちづくりの展開に期待ができる内容となっていた」とされた。
さらに、「駅周辺の配置機能についても、『ものづくり』の裾野を広げる Fabカフェや子育て支援など、日常生活の拠点となる常陸多賀駅とその周辺エリアの特徴を的確に捉えた提案となっており、提案全体を通して、デザイン監修者に必要な視点が充足している内容となっていた」と講評している。