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 静岡県伊東市は、「伊東市新図書館」の設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、特定事業者にMARU。architecture(マル・アーキテクチャ、東京・台東)を選定した。次点者は山下設計(東京・中央)だった。 

全体イメージ。鉄筋コンクリート造の人工地盤で「丘」をつくる。「丘」の上に3層の図書フロアを載せ、各フロアには、それぞれ特徴を持った屋外テラスを設ける。なお、この提案内容がそのまま出来上がるわけではない(資料:MARU。architecture)
全体イメージ。鉄筋コンクリート造の人工地盤で「丘」をつくる。「丘」の上に3層の図書フロアを載せ、各フロアには、それぞれ特徴を持った屋外テラスを設ける。なお、この提案内容がそのまま出来上がるわけではない(資料:MARU。architecture)
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 現在の「伊東市立伊東図書館」は、「伊東市生涯学習センター中央会館」の館内にある複合施設として1980年に建設された。その後40年が経過し、老朽化が進んでいるほか、開架や学習スペース、駐車場の不足など、各種課題を抱えていることから、図書館機能と生涯学習センター機能を併せ持つ「伊東市新図書館」として整備することになった。伊東市は「伊東市新図書館基本構想」を2021年3月に策定。新図書館では、この基本構想に基づいて、次の7つの機能を導入することにしている。

 (1)交流機能、(2)一般コーナー機能、(3)伊東市情報センター機能、(4)児童コーナー機能、(5)ティーンズコーナー機能、(6)生涯学習センター機能、(7)ICT機能。

特定事業者の技術提案書の一部。放射状の壁配置によって、外周部にテーマごとのコーナーをつくり、中央からそれぞれにアクセス可能な計画とする。中央部は、郷土資料を中心に伊東のすべてが分かる「まちのミュージアム」。「まちのミュージアム」によって、各テーマの図書や展示を結ぶことで、分野ごとの関連性をつくり出し、利用者の興味の連鎖を生み出す(資料:MARU。architecture)
特定事業者の技術提案書の一部。放射状の壁配置によって、外周部にテーマごとのコーナーをつくり、中央からそれぞれにアクセス可能な計画とする。中央部は、郷土資料を中心に伊東のすべてが分かる「まちのミュージアム」。「まちのミュージアム」によって、各テーマの図書や展示を結ぶことで、分野ごとの関連性をつくり出し、利用者の興味の連鎖を生み出す(資料:MARU。architecture)
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 MARU。architectureによる提案は、鉄筋コンクリート造の人工地盤で「丘」をつくり、その上に3層のメインフロアを載せるもの。図書館機能を持つフロアを洪水時に想定される浸水高よりも上に配置することで、本や資料を守ることができる。上部フロアは、図書空間に求められる多様で自由な空間を構成しやすい鉄骨造とする。

まちと緩やかにつながる「丘」のイメージ。地上階に、観光情報やカフェ、ショップを核とした建物の顔をつくる。道路より少し上のレベルには、子どもが自由に楽しく遊べる「だんだん広場」を設ける(資料:MARU。architecture)
まちと緩やかにつながる「丘」のイメージ。地上階に、観光情報やカフェ、ショップを核とした建物の顔をつくる。道路より少し上のレベルには、子どもが自由に楽しく遊べる「だんだん広場」を設ける(資料:MARU。architecture)
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 メインフロアでは、放射状の壁配置によって、外周部に「あつまり」、「くらし」、「はぐくみ」など、テーマごとのコーナーをつくる。放射状に配した壁面は、日射を制御し、自然通風を促すなど、室内環境を整えるための「ひだ」としての役割を持つ。

1階イメージ。ものづくり体験スペースやスタジオ、小ホールなどのアクティブな機能と関連書籍を配置し、多様な創造が生まれる場とする(資料:MARU。architecture)
1階イメージ。ものづくり体験スペースやスタジオ、小ホールなどのアクティブな機能と関連書籍を配置し、多様な創造が生まれる場とする(資料:MARU。architecture)
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 審査講評では、「施設計画に関しては、基本構想に掲げる7つの拡充機能が存分に取り入れられ、図書館および生涯学習センターのフロア内に『ひだ』と呼ばれる特徴的な放射状の壁を配置し、用途を分節化しつつフロア全体を構成する手法は、新規性が高い」とされた。また「今後、市関係部局・図書館、市民との連携の下に、設計が進められることにより、市全体と調和が図られた『国際観光温泉文化都市いとう』のシンボルとなり得る図書館が実現する可能性が最も高いと評価された」と講評している。

2階は多世代の交流の場。子どもの空間を中心として、有機的な書架配置や、様々なスタイルの閲覧席、交流ルームなどによって、多世代の様々な交流を促す(資料:MARU。architecture)
2階は多世代の交流の場。子どもの空間を中心として、有機的な書架配置や、様々なスタイルの閲覧席、交流ルームなどによって、多世代の様々な交流を促す(資料:MARU。architecture)
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