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 福島県は「ふくしま農業人材育成センター(仮称)」の設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、辺見設計(福島県白河市)とシーラカンスアンドアソシエイツ(C+A)の2社によるJV(共同企業体)を最優秀に選定した。後者はCAt(C+A tokyo、東京・渋谷)が担当する。次点はティ・アール建築アトリエ(福島県郡山市)だった。

「クリエイティブ・ホール」のイメージ。農と情報をつなぐ知識・技術や経営管理などの実践能力を身に付けるための中心的機能を果たす。講義や直売イベント、オープンラボ、スマート農業機械を使用した演習などの用途に対応する(資料:辺見設計・C+A JV)
「クリエイティブ・ホール」のイメージ。農と情報をつなぐ知識・技術や経営管理などの実践能力を身に付けるための中心的機能を果たす。講義や直売イベント、オープンラボ、スマート農業機械を使用した演習などの用途に対応する(資料:辺見設計・C+A JV)
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 「ふくしま農業人材育成センター」は、1988年4月に開校した農業総合センター農業短期大学校(アグリカレッジ福島)に、研修施設や学生寮を併せた施設だ。福島県は、県内唯一の農業実践の高等教育機関として、国際競争力を見据えた幅広い知識や鋭い経営感覚 、先端技術などの習得を促す施設の整備を進める。今回のプロポーザルでは、次の5題を提案課題として求めた。

 (1)県農業の持続的発展に向けた先端技術(スマート農業)を学べる、(2)良好な教育・研修環境の中で学生や研修生が快適に過ごせる、(3)学生などの自らの学びと農業者や指導者などとの多様な交流を促す、(4)伝統と革新、地域に配慮した意匠、県産材の積極的な活用を実現し、エネルギー性能が高く持続可能性に優れる、(5)それ以外に提案者が特に重要と考えること。

最優秀者による技術提案書の一部。集落のイメージを具現化した配置とした。大小の外部空間が有機的につながり、一体感がありながら、明確なゾーニングとセキュリティーを確保している(資料:辺見設計・C+A JV)
最優秀者による技術提案書の一部。集落のイメージを具現化した配置とした。大小の外部空間が有機的につながり、一体感がありながら、明確なゾーニングとセキュリティーを確保している(資料:辺見設計・C+A JV)
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 辺見設計・C+A JVは、先端技術を学ぶ研修室として、六角形平面の「クリエイティブ・ホール」を提案した。同ホールは、直売イベント時には周囲が開放された大空間に、開口部を閉じればスマート農業機械を使用した演習時に、複数の画像を同時投映可能な空間になるなど、多様で立体的な学びに対応できるのが特徴だ。

 また、学習や協働の中心となる「クリエイティブ・ラボ」、学生や研修生、指導者の交流を促す「コミュニティ・テラス」、農と生活をつなぐ半外部空間の「ドマ」や「エンガワ」など、教育施設としても生活施設としても、実現性に踏み込んで配慮した構成だ。

「クリエイティブ・ラボ」のイメージ。多目的ホールや図書室、食堂といった既存施設とクリエイティブ・ホールやゼミ室をつなぐ(資料:辺見設計・C+A JV)
「クリエイティブ・ラボ」のイメージ。多目的ホールや図書室、食堂といった既存施設とクリエイティブ・ホールやゼミ室をつなぐ(資料:辺見設計・C+A JV)
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 審査講評では、「特徴的な六角形平面のスマート農業研修室は、その1面がガラス張りの格納庫、また3面が開放された形となっており、そのつくり方や使われ方に今後の多様な展開の可能性が感じられる」と高く評価された。

 また、「集落のイメージを具現化した魅力を感じる配置や、施設内部に施されたドマ・ヒロマ・エンガワなど人々が集まる様々な仕掛け、さらに3~4室のユニットの分節化により、随所に外光が差し込む温かみのある平面計画は、住む者が心安らぐ優しさを持った居住空間である」とされた。

 加えて「コストシミュレーションを実施した実現性の高い提案であること、ヒアリングにおけるチーム全体での対応や綿密に作成された取り組み態勢から感じられるチームワークの良さなど、このプロポーザルに対する熱意や理解の深さが感じられた」と講評している。

学生や研修生、指導者の交流を促す「コミュニティ・テラス」。男女の研修生棟の間に位置し、収穫した作物の調理や研修、講師との懇親会を行う(資料:辺見設計・C+A JV)
学生や研修生、指導者の交流を促す「コミュニティ・テラス」。男女の研修生棟の間に位置し、収穫した作物の調理や研修、講師との懇親会を行う(資料:辺見設計・C+A JV)
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