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 長野県軽井沢町は、新庁舎と複合施設の基本計画・基本設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、山下設計と三浦慎建築設計室(ともに東京・中央)の2社によるJV(設計共同体)を最優秀提案者に選定した。優秀提案者(次点)は坂茂建築設計(東京・世田谷)だった。2次審査には、この他、隈研吾建築都市設計事務所(東京・港)やシーラカンスアンドアソシエイツ(東京・渋谷)など強豪が肩を並べていた。

「まちニワ」の中核を担う未来の新庁舎(図右手)と複合施設(図左手)のイメージ。遠景となる浅間山の15~23度の稜線(りょうせん)に沿った屋根形状は、水平に伸びやかに森に広がり、圧迫感を与えない(資料:山下設計・三浦慎建築設計室JV)
「まちニワ」の中核を担う未来の新庁舎(図右手)と複合施設(図左手)のイメージ。遠景となる浅間山の15~23度の稜線(りょうせん)に沿った屋根形状は、水平に伸びやかに森に広がり、圧迫感を与えない(資料:山下設計・三浦慎建築設計室JV)
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 軽井沢町の現役場庁舎は1968年に竣工。近年、配管設備の老朽化をはじめ、ユニバーサルデザインへの未対応や防災拠点としての機能不足など様々な課題を抱えていた。加えて、中央公民館など周辺の公共施設も建築後、約40年が経過し、将来を見据えた建築計画を立てる時期に入ってきた。

 町では新庁舎の建設、周辺施設の代替施設となる複合施設の建設に関する事業を「庁舎改築周辺整備事業」とし、2021年3月に「庁舎建設及び周辺整備基本方針」を策定した。整備予定地は、しなの鉄道・中軽井沢駅から徒歩約6分の、現庁舎や中央公民館などの敷地を含む町有地だ。東側には、軽井沢町国民健康保険「軽井沢病院」が隣接している。

企画提案書の一部。敷地の北側に新庁舎、国道18号側に公民館機能を備えた複合施設を配置。隣接する軽井沢病院のロータリーとの一体整備を見据えた計画とした。地元産の浅間石を用いた「浅間石ロッジ」「浅間石サークル」「浅間石ポット」を「まちニワの種」として分散配置し、そのまわりで人々の活動が行われることで、「まちニワ」が発生する(資料:山下設計・三浦慎建築設計室JV)
企画提案書の一部。敷地の北側に新庁舎、国道18号側に公民館機能を備えた複合施設を配置。隣接する軽井沢病院のロータリーとの一体整備を見据えた計画とした。地元産の浅間石を用いた「浅間石ロッジ」「浅間石サークル」「浅間石ポット」を「まちニワの種」として分散配置し、そのまわりで人々の活動が行われることで、「まちニワ」が発生する(資料:山下設計・三浦慎建築設計室JV)
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 山下設計・三浦慎建築設計室JVの案は、「風土自治を育む場=『まちニワ』の拠点となる新庁舎・複合施設」がテーマ。新庁舎と複合施設を「町に点在する(させる)『まちニワ』をつなぐ新たな拠点」と位置付け、軽井沢の風土に調和する「森の庁舎」を提案している。

両施設と軽井沢病院の中央に設ける「もりの縁側」。水平に広がる軒先を支える丸太、堅固に積まれた浅間石、森に面するテラス――。軽井沢を象徴する素材を用いることで、質朴ながら長期の風雪に耐える空間とする(資料:山下設計・三浦慎建築設計室JV)
両施設と軽井沢病院の中央に設ける「もりの縁側」。水平に広がる軒先を支える丸太、堅固に積まれた浅間石、森に面するテラス――。軽井沢を象徴する素材を用いることで、質朴ながら長期の風雪に耐える空間とする(資料:山下設計・三浦慎建築設計室JV)
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 「まちニワ」とは、中村良夫・東京工業大学名誉教授が提唱した「社交・賑わいの場」だ。軽井沢町が14年12月に発表した「軽井沢グランドデザイン」に描かれている。50年、100年先のまちづくりについて、住民と行政が一緒に考える「場=まちニワ」となる施設づくりを目指す。

自然を感じる開放的な庁舎屋内。雄大な屋根の下に人々が集う。大スパンを可能とする木架構や「浅間石ロッジ」「浅間石ポッド」など、高原保養都市軽井沢のシンボルとなる構造や仕上げを取り入れた(資料:山下設計・三浦慎建築設計室JV)
自然を感じる開放的な庁舎屋内。雄大な屋根の下に人々が集う。大スパンを可能とする木架構や「浅間石ロッジ」「浅間石ポッド」など、高原保養都市軽井沢のシンボルとなる構造や仕上げを取り入れた(資料:山下設計・三浦慎建築設計室JV)
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 今回の提案内容について、山下設計・三浦慎建築設計室JVは次のように説明する。「これからの時代の庁舎像とともに、軽井沢病院との関係性を含めたシビックコアとしての将来像を、周辺環境を含め、幾層か時間を重ねながらつくった。屋根形状については、八ヶ岳高原音楽堂や倉敷市民会館といった、時代を超えて存在感を持つ建物の屋根を参照しながら、清貧でありながら、これからの軽井沢らしさを表現する形状を探してスタディーした」

 また、これから基本計画・基本設計をまとめるに当たって、「プロポーザルでの意匠提案、庁舎としての機能提案を大事にしつつ、町の方々と共に、今後の公共建築のニーズや可能性を丁寧に押さえていきたい」とコメントしている。