滋賀県守山市は、伊勢遺跡の遺構展示施設などの実施設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、優秀者に平田晃久建築設計事務所(東京・港)を選定した。次点者は隈研吾建築都市設計事務所(東京・港)だった。
伊勢遺跡は、東西約700m、南北約450m、面積約30万m2に及ぶ弥生時代後期としては国内最大級の大規模遺跡だ。東半分に大型建物が集中しており、ここが祭祀(さいし)空間であったと考えられる。祭祀空間の中央部に方形区画があり、それを取り巻く周辺には、建物が円周上に規則性を持って配置されている。
優秀者に選ばれた平田晃久建築設計事務所の案は、「伊勢遺跡の先鋭性を浮かび上がらせる」がテーマ。復元展示する柵で方形区画を可視化し、円形の平面形をした展望施設を計画した。円と方形の組み合わせで配列された伊勢遺跡と呼応するように、「単純な幾何学を用いた配置と建築」を提案している。
方形区画地域の中には、大きな屋根を持つ遺構展示施設を配置し、メインエントランスから見える位置に、一般開放する多目的スペースを設けて、市民交流を促す。古代の舟をイメージした大屋根の内側は、プロジェクションマッピングの投影が可能なスクリーンにもなる。
審査委員会の委員長で守山市文化財保護審議会委員の大橋信弥氏は、優秀者案の評価ポイントを8点挙げている。
(1)映像展示などの展示と建築が結びついた構成、(2)伊勢遺跡の歴史的・構成的な特徴を際立たせた配置、(3)古代の雰囲気に包まれたような広がりと、スケール感を持つ映像展示の手法の提示、(4)多目的スペースを広く配置し、人々の交流・史跡の活用を図る空間構成、(5)歴史的に重要な位置を占める伊勢遺跡に対峙する真摯な姿勢、(6)楼観の全体像が上から見られるバリアフリーの展望施設、(7)具体的な計画に即したコストマネジメント、(8)広い多目的スペースを施設内に配置し活動と交流をはぐくむ場の提案など。
また、次点者案については、「総合的に安定した提案」と評価。しかし、(1)円形と方形を組み合わせた伊勢遺跡の時代背景・特性を最大限生かした空間配置、(2)建築と結びついた映像を含む展示手法ーーの点で、優秀者に及ばなかったと講評した。