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 福島県は、郡山合同庁舎の設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、最優秀提案者にaat+ヨコミゾマコト建築設計事務所(東京・新宿)と鈴木伸幸建築事務所(福島県白河市)の2社によるJV(設計共同体)を選定した。次点者は槇総合計画事務所(東京・渋谷)だった。

最優秀提案者による全体イメージ。郡山の近代化を支えた「安積疏水(あさかそすい)」の歴史を踏まえた水盤を南側に配置した。南側に大きく開き、南北に延びる「安積テラス」や大屋根のハイサイドライトが館内の換気を促し、穏やかな自然通風を実現する(資料:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所・鈴木伸幸建築事務所JV)
最優秀提案者による全体イメージ。郡山の近代化を支えた「安積疏水(あさかそすい)」の歴史を踏まえた水盤を南側に配置した。南側に大きく開き、南北に延びる「安積テラス」や大屋根のハイサイドライトが館内の換気を促し、穏やかな自然通風を実現する(資料:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所・鈴木伸幸建築事務所JV)
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 現在の郡山合同庁舎本庁舎は1930年に建設された。築後90年が経過し、老朽化や狭あい化が進み、増大した行政需要に応じきれず、県民の利便性や安心・安全の確保という観点から多くの課題を抱えていた。

 そこで 福島県では、「郡山合同庁舎整備方針」「郡山合同庁舎基本構想」「福島県郡山合同庁舎整備基本計画」を策定。これからの合同庁舎に求められる機能を整理するとともに、SDGs(持続可能な開発目標)の理念を踏まえながら、大規模災害の頻発化、新型コロナウイルス感染症の拡大をはじめ、行政事務効率化(働き方改革やデジタル化)、および地球温暖化対策のさらなる推進といった近年の社会環境の変化に対応できる新たな庁舎を整備することにした。プロポーザルでは、次の4課題に関する提案を求めている。

 (1)県民の利便性向上および快適な執務空間の確保、(2)県民の安全・安心の拠点となる庁舎のあり方、(3)人にやさしく、環境に配慮した庁舎のあり方、(4)社会環境の変化に柔軟に対応できる庁舎のあり方。

最優秀提案者の技術提案書の一部。奥羽山脈の風景、安積野の開拓史、郡山の都市史を盛り込み、自然と記憶を未来につなぐ建築を目指している(資料:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所・鈴木伸幸建築事務所JV)
最優秀提案者の技術提案書の一部。奥羽山脈の風景、安積野の開拓史、郡山の都市史を盛り込み、自然と記憶を未来につなぐ建築を目指している(資料:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所・鈴木伸幸建築事務所JV)
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 aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所・鈴木伸幸建築事務所JVによる提案は、「自然と記憶を未来につなぐ」「自然に生かされ、自然を生かす」などがテーマ。東側を建物の正面とすることで西からの日差しや奥羽山脈から吹き下ろす風を遮り、南側には、明治時代に開削された「安積疏水(あさかそすい)」の歴史を踏まえた水盤を配置した。また、郡山は音楽活動が盛んな土地であることから、コンサートのほか、展示会や演劇、講演会などに利用できる県民ホールを設け、人々の新たな交流の場としている。

内部イメージ。関係機関を同一階に配置し、各課の場所が一目で分かる見通しの良い空間としている。1階は広がりある空間、2階はコンパクトで独立性が高く、今後想定される県以外の機関の入居にも最適な空間、3階は長い直線カウンターが特徴だ(資料:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所・鈴木伸幸建築事務所JV)
内部イメージ。関係機関を同一階に配置し、各課の場所が一目で分かる見通しの良い空間としている。1階は広がりある空間、2階はコンパクトで独立性が高く、今後想定される県以外の機関の入居にも最適な空間、3階は長い直線カウンターが特徴だ(資料:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所・鈴木伸幸建築事務所JV)
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 審査講評では、「郡山市の歴史性や地域性をよく考えた提案であり、積極性のある県民交流の提案やフレキシブルで多様なワークスペース、2050年カーボンニュートラルに関する取り組みなど、各提案に対して総じて高い評価となった」とされた。また、「県民交流の促進という課題に対し、ビッグパレットふくしまとの連携を意識した配置計画や県民ホールのコンサート利用など、今までの合同庁舎にない新たな交流の場を提供しようとする姿勢が、経済都市郡山市を起点として県民活動が活発化する可能性を感じさせる。県産材や県内生産材の積極活用についても豊富な提案がされていることも、高く評価された」としている。

200席の格納型自走式移動観覧席を持つ多機能スペースとした県民ホール。大会議室と県民ホール、ロビーを一体化すれば、展示会などに利用できる(資料:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所・鈴木伸幸建築事務所JV)
200席の格納型自走式移動観覧席を持つ多機能スペースとした県民ホール。大会議室と県民ホール、ロビーを一体化すれば、展示会などに利用できる(資料:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所・鈴木伸幸建築事務所JV)
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