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 受託開発中心のIT企業、ボックスソフトウエア(以下、ボックス社)はビジネスモデルの転換を図るために、アジャイル開発とDevOpsを活用したプロジェクトを始めた。開発初日、「リリース期間の半減など無理」とメンバーの不信感は強い。チーム一丸となるために、コンサルタントの須田はプロジェクトの全体像を端的に伝える手法「インセプションデッキ」の利用を提案した。

●主要人物
村上 龍彦:ボックスソフトウエア プロジェクトマネジャー。丁寧なプロジェクト運営に定評がある
須田 洋次郎:アジャイル開発やDevOpsの導入支援に携わるコンサルタント。様々な企業を再生させた実績を持つ

●DevOpsチームメンバー
一橋 雄介:開発担当。プログラミングは得意だが後先を顧みない
二葉 圭吾:開発チームリーダー。経験豊富だが、口が悪い
三田 里紗:開発担当。チーム唯一の女性で、常に冷静
四谷 勝久:開発担当。早とちりしがちで、自分に今一つ自信を持てない
五反田 雅夫:開発担当。何でもそつなくこなす、頼れる兄貴分

「君の意見には誰も賛成しないようだ」

 プロジェクトマネジャーの村上龍彦は「我われはなぜここにいるのか」について自分の考えを書き、一番重要と思われるものを赤い枠の中に記述した。

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 「この3個の理由に賛成できる者は? 反対だという者はいるか?」。コンサルタントの須田洋次郎の言葉にメンバーは黙ったまま、うつむいている。須田はこの結果を予測していたかのように、村上に向かってゆっくりと話し始めた。「君の意見には誰も賛成していないようだね。だが、チームのトップにあからさまな反対もしづらい。だから黙っているんだ」。

 須田は視線をメンバー全員に向けた。

須田「開発チームの皆さんはどう感じたかな? きっと疑問だらけじゃないかね。インセプションデッキは質問を引き出すためのツールだ。遠慮はいらないから、リーダーにどんどん手強い質問をぶつけてごらん。君たちの質問がプロジェクトを強くするんだ」

 二葉圭吾が口火を切った。

二葉「ウォーターフォール開発をやめるだけでプロジェクトが成功するって、どうして言い切れるんですか? そもそもウォーターフォールからの脱却が目的なんですか?」

村上「確かに、ウォーターフォール開発にしてもアジャイル開発やDevOpsにしても手段であって目的ではない。DevOpsを手掛けるのは社長に言われたからだが、それをやれば絶対にうまくいくという保証はない」

二葉「社長が言ったからといって、失敗したときに社長が責任を取ってくれるわけではないですよね。うまくいく保証がなくて、進め方もよく分からないやり方に比べると、今までうまくいってたやり方の方が成功するんじゃないかと思います」

 村上は答えに窮した。村上自身、DevOpsで成功した実績はないし、うまくいく自信もない。そんな状況で、どうすれば二葉を説得できるのだろうか。助け舟を出してくれないかと村上は須田の方を見たが、どうもその気はなさそうだ。