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 受託開発中心のIT企業、ボックスソフトウエア(以下、ボックス社)はビジネスモデルの転換を図るために、アジャイル開発とDevOpsを活用したプロジェクトを始めた。村上が率いる開発チームに品質管理部が送り込んだのは佐藤だった。最初は警戒した村上たちだったが、佐藤も「新たな品質戦略を作りたい」と同じ思いを抱いていると知る。

出典:123RF
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●主要人物
村上 龍彦:ボックスソフトウエア プロジェクトマネジャー。丁寧なプロジェクト運営に定評がある
辻岡 謙太郎:ボックスソフトウエア社長。典型的なワンマンタイプだが、慕う社員は多い
小寺 泉:ボックスソフトウエア ビジネスマネジャー。ビジネスで確実に成果を上げるが、人の気持ちや感情は二の次
須田 洋次郎:アジャイル開発やDevOpsの導入支援に携わるコンサルタント。様々な企業を再生させた実績を持つ
佐藤 正子:ボックスソフトウエア 品質管理部担当。品質に対する嗅覚は鋭く、指摘も的確だがルールに厳しい
清田 彰:ボックスソフトウエア プロジェクトマネジャー。村上と同期で数々のプロジェクトを成功に導いてきた

●DevOpsチームメンバー
一橋 雄介:開発担当。プログラミングは得意だが後先を顧みない
四谷 勝久:開発担当。早とちりしがちで、自分に今一つ自信を持てない

 サービスを早くリリースして、利用者からのフィードバックを得る。その結果をサービスに反映して、利用時の品質を高めていく──。プロジェクトマネジャーを務める村上龍彦と開発メンバーは、これで新たな品質戦略が固まったと考えていた。

 品質管理部から参加している佐藤正子は開発チームになじんできた様子だ。朝会では「チームに溶け込むために開発環境を調査しています」とか、「今日はこの部分の設計とソースコードを読んでいました」などと発言した。

 設計とコードの関連がつかめないと、佐藤は「ここが分からないのですけど」とその都度メンバーに質問した。メンバーはどんなに忙しくても、佐藤に対して開発環境の使い方やコードの読み方を丁寧に説明した。

 佐藤の指摘は開発標準の読みやすさに関するフィードバックだと、メンバーは受け止めていた。開発標準に読みにくい箇所があることを反省し、「誰かに作業を引き継ぐ場合に困らないようにしよう」と意識して、指摘された部分に分かりやすい解説を付けるといった工夫を凝らした。

 佐藤の存在はメンバーにプラスの効果を与えているようだ。特に懸念材料はないように見える。それでも村上は佐藤のことが少し気がかりだった。口には出さなかったが、佐藤の態度が素直すぎるように感じられたのだ。