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ハードウエアをオープンにする意味

 常識で考えると、ハードウエアの設計情報や動作に必要なソフトウエアのコード全てをオープンにすると、他に真似されてしまうという懸念があります。実際、Arduinoはそれをベースにした互換機や、廉価版などがさまざまな企業から販売されています。では、それでもハードウエアをオープンにする価値は何なのでしょうか?

 そもそも、Arduinoは特殊な部品を使っておらず、安価で手に入れやすい電子部品で構成されています。つまり、もともと自作できるという想定で開発されているのです。「誰もが手軽に使える」ことが最も重要なのであり、誰が作って誰が儲(もう)けるかというのは重要ではない、というのがオープンソースの世界です。

 オープンにすることの意義は、莫大な広告費用をかけることなく世界に広がり認知されるということです。例えば、Arduinoをオープンにした結果、その考えを支持する人々がArduinoを使った回路の事例などの情報をインターネット上に掲載したり、Arduinoの拡張ボード(シールドと呼ぶ)を開発したりし、コミュニティーが自律的にArduinoの世界を広げていきました。まさに、これこそがオープンソースハードウエアの世界です。

 結果的に、Arduinoは世界中で利用され、互換機も販売されています。しかし、それによって本家Arduinoが売れなくなるということはありません。そして、Arduinoはプロトタイプの製作や教育の分野でデファクトスタンダード(事実上の標準)としての地位を揺るぎないものとしました。

企業がハードウエアをオープンにする意味

 企業にとって、自分たちの製品をオープンにするということは勇気の要ることかもしれません。しかし、あえて個人的な意見を言わせてもらうと、クローズにしなければならない理由がよく分かりません。

 「オープンにすれば真似されてしまう」という懸念が最も多いかもしれません。しかし、クローズにしたとしても、よほど特殊な技術を使っていない限りは、近いうちにどこかに真似をされるものです。逆に、同じような製品、もしくはスペックなどで勝る製品を競合他社に出された方が、より難しい状況に陥るのではないかと思います。それに、本当に真似されたくない特殊な技術やアイデアがあるのであれば、それは特許として登録するはずです。

 せっかく苦労して作ったものを、そのままコピーされるのではないかという懸念があるかもしれませんが、それは大きな誤解です。オープンソースというのは、情報を公開しているだけで、それを自由に利用してよいという意味ではありません。

 それぞれのオープンソースプロジェクトでは、プロジェクトごとにGPL(GNU General Public License)などのライセンスが規定されています。パプリックライセンスのようなライセンスにしない限り、その権利は著作権者にあります。それを無視して利用することは許されません。

 世界はここまでインターネットやソーシャルメディアが発達し、知識の共有が簡単になった。こうした世界ではクローズにするよりも、むしろオープンにした方が世界から大きな支持を受け、結果的に成功する確率が高まるのではないか?──。海外の有力なベンチャー企業には、このように考えるところが増えています。

 かつてベンチャー企業だった米グーグル(Google)は、無料のインターネットサービスを提供することで短期間のうちに世界中で支持され、企業は急成長を遂げました。変革する世界の中では柔軟な考え方(すなわち、その時点における非常識)をみせる企業が大きく飛躍するのではないでしょうか。ハードウエアをクローズにするか、それともオープンにするかについても、柔軟な考え方を要する時代になっていると思います。