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 最近の報道で気になることがあります。中期経営計画の大きな目標の1つに「ITコストの削減」を掲げている企業が多いことです。

 ITコストの削減とは何でしょうか? 普通に考えると次の2つが浮かびます。

[1]実は無駄なシステムや運用経費があったので、それを排除する。
[2]ITを使わないようにすることで、システムを廃止する。

 [1]は非常に恥ずかしい話であり、現行のITシステムの設計や管理が甘かったことを露呈しています。大々的に広報する内容ではありません。一方、[2]は時代に逆行する話であり、大企業が採る方針としては考えられません。

 これらのどちらでもないとすると、3つめを考えなければなりません。すると、次の内容になるのではないでしょうか。

[3]サービスレベルを落とさずにIT企業への支払いを減らす。

「コスト削減」を目標に掲げる弊害

 私は「コスト削減」という言葉が大嫌いです。最初に減らされるのは決まって声の小さいところなのですが、そこが不要とは限らないからです。コストを削減しなければならないのなら、まず上に立つものがそれを実践し、100円でも無駄をなくす努力をすべきです。そうでないと、単なるいじめになる危険性があります。

 しかし、残念ながら日本の企業では「コスト削減=正義」という信仰が広く根付いています。経営者が最初に学ぶことは「利益」の計算方法です。

利益=売り上げ - 経費

 これは、誰でも分かります。では、利益を増やすにはどうすればよいでしょうか。1つは「経費を減らす」、もう1つは「売り上げを増やす」です。

 売り上げを増やすにはいろいろなアイデアが必要であり、社内だけではなく外部にも協力者をつくって、その人たちとの話し合いが必要になります。そこにはリスクが付きまといます。そのため、経営者にとってやりやすいのは「経費を減らす」方になります。

 「経費を減らす」こと自体は悪いことではありません。それが「無駄をなくす」というものであれば、良いか悪いかという次元ではなく、極めて当たり前のことです。

 私も経験がありますが、日本の大企業の場合、経営者が「コスト削減」を目標にすると、その下は何が何でも、その目標を達成しようとします。問題は、明らかな無駄がなかった場合です。そのときはどうするのでしょうか? 無駄ではないものを何とか無駄と認定しなければ目標を達成できません。このとき、経費削減の最も標的になりやすいのが「外部への委託費」です。

 中でもIT系は狙われやすい経費となります。なぜなら、価値が目に見えにくいからです。