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 自動車において、人の声や周囲の環境音などを集音するマイクの搭載数が増えている。「マルチマイク」や「マイクアレー」などと呼ばれる、複数のマイクを利用できる環境が整いつつある。

4個以上のマイクがクルマに

 スマートフォンの普及によって高指向で高音質なマイクのコストの低減が進んだことで、「現在は多くても2個だが、スマートフォンやタブレット端末でも今後は4~5個搭載していくことになりそうだ」(米Qualcomm Technologies社 Director, Product ManagerのRavi Satya氏)。複数のマイクから収集した音声信号を高速に処理するDSPの性能向上や処理アルゴリズムの改良も進んでいる。

 先進的な事例としては、英Jaguar社が2013年9月にマイナーチェンジした高級セダン「XJ」がある(図1)。同車両には、4個以上のマイクが搭載されている。これは、「カンバセーションアシスト機能」と呼ぶオプション機能を実現するためのもの。高速道路など雑音が多い状況でも、運転席や後部座席の人が会話をしやすいようにするシステムである。

図1 4個以上のマイクを搭載するクルマ
図1 4個以上のマイクを搭載するクルマ
Jaguar社の高級セダン「XJ」の一部モデルには運転席と後部座席といった、離れた乗員がスムーズに会話できる「カンバセーションアシスト機能」を搭載している。車内には複数のマイクとスピーカーを配置し、雑音除去などの処理をリアルタイムで施している(a、b)。(図:(b)はNuance Communications社の資料を基に本誌が作成)
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 発話した音声を音源から最も近いマイクで収集し、他の同乗者の近くにあるスピーカーから声を流す。車内の雑音状態も把握しており、音声にノイズリダクションなどの雑音処理や音量調節などを施す。同技術は、Nuance Communications社が提供したもの。同社の日本法人であるニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパン オートモーティブ ビジネスユニット プリンシパル マーケティングマネージャーの村上久幸氏によれば「カンバセーションアシスト機能は今後、Jaguar社だけでなく複数の車種への展開が予定されている」という。

信号処理技術の進歩が後押し

 エレクトロニクス機器において、人の声や周囲の環境音などを集音するマイクの搭載数が増えている。特に顕著なのが、自動車である。

 自動車向けの音声技術で支配的なシェアを握る米Nuance Communications社で車載向け技術を担当するDirector Marketing AutomotiveのFatima Vital氏は次のように自動車業界の動向を分析する。「自動車メーカーにとって、音声認識は数年前までは多数ある車載機能の1つでしかなかった。だが今は違う。自動車における音声認識機能の重要性は今後ますます高まるだろう。それに伴って搭載されるマイクの数も増える。最近は高級車を中心に2個搭載する車両も珍しくなくなった」。

 かつてコスト高を理由にたった1個のマイクを搭載することすら高いハードルがあった自動車業界。この常識が崩れつつある。マイクのコスト低減に加えて、ユーザーの期待、そして複数のマイクを使いこなす信号処理技術の進歩が後押ししている。