北海道から中部、近畿、四国、中国、九州と日本列島の広範囲を大雨が襲った。台風7号や停滞する前線が各地にもたらした豪雨の影響で、多数の住宅が損壊・浸水の被害を受けるだけでなく、法面崩落や堤防決壊などによって数多くのインフラや施設が損傷したり機能不全に陥ったりした。

2018年7月列島縦断豪雨
目次
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土砂崩落を橋はどうかわす? 落橋現場で取り入れた新手法
2018年7月の西日本豪雨で土砂崩落に巻き込まれた高知自動車道の立川(たぢかわ)橋の復旧工事で、新しい再発防止策が取り入れられている。斜面の途中に設置した構造物で崩落する土砂の向きを変えて、橋への衝突を防ぐ「流向制御工」だ。
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「わずか1年で復旧」の舞台裏、土砂崩落で流失した立川橋
管理敷地外から崩落した土砂が、高速道路の橋梁を押し流す――。2018年7月の西日本豪雨で、高知自動車道の立川(たぢかわ)橋が前代未聞の被害を受けてから、はや10カ月がたつ。現場では19年夏までの開通を目指して、着々と復旧工事が進んでいる。
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西日本豪雨の被害1兆円超、年内に対策取りまとめ
国土交通省は9月28日、西日本豪雨を受けて設置した専門家による委員会の初回会合を開き、同豪雨の被害額が1兆円を超え過去最大になったことを明らかにした。委員会は大規模豪雨への対策を審議し、年内に提言をまとめる予定だ。
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小田川と肱川に緊急治水対策、5年間で790億円
国土交通省は、7月の西日本豪雨で広範囲にわたる浸水被害が発生した小田川(岡山県)と肱川(愛媛県)で、それぞれ堤防かさ上げや河道掘削などの緊急治水対策を実施する。どちらも約5年間で集中的に進める激特事業に位置付け、年度内に着手する。
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ダム放流の被害予測を市に伝えず、避難指示の判断遅れか
西日本豪雨で愛媛県の肱川上流にある鹿野川ダムが7月7日に緊急放流を開始する前、国土交通省のダム管理所が放流後の浸水面積などを予測していたのに、市に伝えていなかったことが分かった。
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堆積した流木に土砂が押し寄せ谷底へ、高知道の橋桁流失
7月の西日本豪雨で大きな被害を受けた高知自動車道。斜面崩壊の影響で橋桁が流失した立川(たぢかわ)橋の被災メカニズムが明らかになってきた。今後の焦点は復旧方法。残った橋脚や橋台を再利用するのが効率的だが、土砂に埋もれた橋脚の調査は終わっていない。西日本高速道路会社は、完全復旧までに1年以上の長期間を…
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避難指示は大量放流の5分前、生かせなかったホットライン
愛媛・肱川のダム放流で問われる国・自治体の対応(後編)
西日本豪雨で愛媛県の肱川流域に位置する大洲市では、上流の鹿野川ダムが緊急放流した影響で大規模な浸水が発生し、住民4人が死亡した。市は、緊急放流の2時間半前からその可能性を把握していながら判断を先送り。市が住民に避難指示を発令したのは緊急放流のわずか5分前だった。
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「中小洪水対応」の操作規則、マニュアル通りの放流は適切だったか
愛媛・肱川のダム放流で問われる国・自治体の対応(前編)
愛媛県南西部を流れる肱川では、西日本豪雨で上流の野村ダムが緊急放流を実施し、西予市で広範囲にわたる浸水被害が発生した。その下流にある鹿野川ダムでも緊急放流し、大洲市で大規模な氾濫が起こった。ダムを管理する国土交通省は規則に従った放流だと主張するが、果たしてそれは適切な対応だったのか。
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問われる「氾濫原管理者」の本気度
岡山・真備町の氾濫から見えてきた教訓2
「平成30年7月豪雨」で広範囲に浸水して50人を超える死者が出た岡山県倉敷市真備町では、河川にバックウオーター現象が生じる地形的特徴以外にも、様々な水害リスクがあったことが浮かび上がってきた。予算や人員が限られるなか、全ての対策を取ることは不可能だが、それを補完するソフト対策などにきちんと取り組め…
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「バックウオーター現象」の連鎖で氾濫拡大
岡山・真備町の氾濫から見えてきた教訓1
「平成30年7月豪雨」で、50人を超える死者が出た岡山県倉敷市真備町。高梁(たかはし)川水系の高梁川の支流である小田川などの決壊によって被害が拡大した。被災直後から決壊の要因として専門家が指摘するのが、「バックウオーター現象」だ。
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5000カ所以上で山崩れ、尾根近くから崩壊も多数
西日本を襲った豪雨で甚大な被害を受けた広島県南部で、斜面崩壊が5000カ所以上で起きていたことが分かった。記録的な大雨によって、比較的崩れにくい山の尾根付近からも多数の崩落が生じた。広島大学と防災科学技術研究所の調査チームが7月16日に明らかにした。
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寸断した「広島呉道路」を初公開、土石流と道路崩壊の因果関係は?
西日本高速が検討委員会を立ち上げ、ドローンで現場を確認(動画あり)
西日本高速道路会社は7月13日、7月豪雨の影響で崩落した広島呉道路坂南インターチェンジ(IC)―天応西IC間の現場を初めて公開した。
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岡山・真備洪水、闇夜に渦巻く濁流の恐ろしさ
平成最悪の被害となった西日本豪雨。岡山県倉敷市真備町地区では、街の南側を流れる小田川などが氾濫し、街の4分の1が水没した。国土地理院の分析によると、浸水は最も深い場所で約4.8mに達した。決壊した堤防の近くに暮らしていた50代男性は、屋根の上に逃げて九死に一生を得たという。男性は押し寄せる濁流の恐ろ…
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被災地ルポ:想定を超えた洪水と土石流の爪痕
「孤立」と闘った広島・呉周辺(後編)
土砂災害が相次いだ広島県呉市とその周辺市町では、被災から数日間、道路や鉄道の不通によって孤立状態が続いた。7月12日に現地に入った記者による被災地ルポの後編では、広島県竹原市の中心部を流れる賀茂川が氾濫したエリアと、土砂崩れが相次いだ東広島市黒瀬地区の様子をお伝えする。
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砂防堰堤を破壊し、1800人の集落を襲った土石流
一時は「陸の孤島」と化した広島県坂町小屋浦地区を歩く
7月6日夜に大規模な土石流が発生し、10人以上の死者が出ている広島県坂町小屋浦地区。広島湾に面する人口約1800人の小さな集落だ。同地区を襲った土石流は上流の砂防堰堤を粉々に破壊し、市街地をのみ込んだ。記者は7月14日午前8時すぎ、被害の状況を取材すべく現地に入った。
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避難指示の遅れ再び、情報伝達や基準に不備
近年の豪雨災害でたびたび問題となる避難指示発令の遅れが、今回の西日本豪雨でも見られた。自治体が河川の水位に関する的確な情報をつかめなかったり、指示や勧告発令の基準を定めていなかったりしたことが、対応の遅れにつながった。
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被災地ルポ:土砂が街をのみ込む
「孤立」と闘った広島・呉周辺(前編)
豪雨による土砂災害で周辺の市町とつながる道路や鉄道が寸断され、孤立状態が続いた広島県呉市とその周辺市町。7月11日深夜に広島市と呉市を結ぶ国道31号が復旧したことを受け、翌12日に日経コンストラクションの記者が向かった。
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平成最悪の豪雨被害、写真で見る被災地の今
死者・行方不明者200人超、浸水・土砂災害が広域で多発
西日本を中心に襲った記録的な豪雨は、各地で大規模な河川氾濫や土砂災害など甚大な被害をもたらした。警察庁の発表によると、7月12日午後1時45分時点で確認された死者は14府県で200人に達した。広島、岡山、愛媛の3県が特に多い。行方不明者は4県で21人。死者数は平成の豪雨災害で最悪となった。
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高知道の橋桁流失現場、ドローンで空撮
西日本を襲った豪雨で山腹が崩壊し、トンネル坑口そばの橋桁が流失した高知自動車道の立川(たぢかわ)橋。地元の男性がドローン(小型無人機)を使って上空から現場を撮影した。
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JR西日本の9路線で運転見合わせ「1カ月以上」、橋梁の流失や斜面崩壊で
JR西日本は7月11日、「平成30年7月豪雨」で被災した9路線10区間の運転見合わせが1カ月以上の長期間に及ぶとの見通しを発表した。今後の調査で、対象区間がさらに増える恐れもある。