近年の豪雨災害でたびたび問題となる避難指示発令の遅れが、今回の西日本豪雨でも見られた。自治体が河川の水位に関する的確な情報をつかめなかったり、指示や勧告発令の基準を定めていなかったりしたことが、対応の遅れにつながった。
岡山県倉敷市では市内を流れる小田川の堤防が一部決壊した。小田川が東西に横切る真備地区では最大5mの高さまで浸水し、40人以上が死亡した。市が真備地区に避難指示を出したのは、堤防が決壊するわずか数分前だった。
自治体が住民に発令する避難情報には、「避難準備・高齢者等避難開始」、「避難勧告」、「避難指示(緊急)」の3種類がある。後の情報ほど、危険が迫っていることを表す。
倉敷市は当初、土砂災害の危険性があるとして、7月6日の午前11時30分に真備地区を含む市北西部に「避難準備・高齢者等避難開始」を発表した。降雨量の増加に伴って、午後8時ごろから小田川の水位が毎時1m程度のペースで急激に上昇。午後10時ごろには事前に取り決めてあった避難判断水位に達したことから、真備地区全域などを対象に避難勧告を発令した。
その後も水位の上昇は止まらず、市は午後11時45分に小田川を挟んだ真備地区の南側に避難指示を発令。続けて翌7日午前1時30分に小田川の北側の地域にも避難指示を出したものの、その数分後に堤防が決壊した。
倉敷市は水位上昇の速さが想定外だったとしている。市は、小田川を管理する国土交通省岡山河川事務所から水位などの情報を適時受け取って避難の指示を判断していた。しかし、水位上昇の見通しに関する精度の高い情報はつかめていなかった。