東京から特急で2時間くらいの場所のお客さんに納品した製品がトラブルを起こしたんです。よくよく聞いたら、そもそも仕様に合わない製品をろくに試験もせずに納品して、稼働し始めてから1時間も動かなかったと。納品したのはその元上司でした。

その会社ではそんなことが普通だったんですか!

 普通はしないですよ。あり得ない。当然、先方はカンカンです。

 異動先の部署の上司と「火消し」に入り、そのお客さんに合う装置を作ることになりました。平日は会社で図面を引いて試作を頼んで、出来たら土日に2時間かけてお客さんのところへ持ち込んでテストして。2カ月間、これを繰り返しました。休みはなかったですけど、この仕事そのものは楽しかったですね。若かったのかな(笑)

もみ消される上司の悪行、会社に愛想を尽かした

楽しかったのに、辞めた。

 特別対応したからかもしれませんが、カンカンだった先方の社長さんは結果的にとてもいい人で、その会社は技術力も高かった。こういうお得意さまに会社は何をしているんだ、と思ったんです。

 その元上司の所業は、何度か上に伝えました。でも、元上司のさらに上の上司がもみ消すんです。うちの製品を使ってくれている大切なお客さんについて無茶苦茶な納品をしたのに、会社は何もしない。このままだと自分も染まる、ダメになる。それで辞めました。新卒で入って数年、30歳のときでした。

元上司には何と言ったんですか?

 工場で、元上司がいるときに「すみません、辞めます」って。「そうか、残念だな」と言われました。

その後、転職活動をしたわけですね。

 してません(笑)。いきなり辞めて仕事もないので、取りあえず地元の四国へ戻るか、と。実家の親に戻ることを伝えても、特に何も言われませんでしたね。荷物が少なかったので、2週間くらいで準備して、部屋を引き払って戻りました。

では、転職活動は……。

 まだしなかったです。ひたすらオンラインゲームの「ファイナルファンタジーXI」をプレーして、ガンプラ(アニメ「機動戦士ガンダム」のプラモデル)を作ってました。当時は実家にいた弟に「朝からガンプラかよ!」と吐き捨てられたことを覚えてます。

 しばらくして、さすがにそろそろと思い始めてハローワークに通いました。そこで出会ったのがNTT西日本のグループ会社です。9カ月の自称「充電期間」を経ての転職です。

ゲームとプラモデルざんまいの「充電期間」から、いきなりIT業界へ

製造系とは全然違いますよね。

 そうなんです。

 官公庁や金融系、農協が導入しているITシステムの監視、ヘルプデスクが主な仕事でした。問い合わせを受けて問題を切り分けて、対応するチームに作業を割り振る、という業務ですね。機械系の仕事とは全く違って、業務システム、ネットワーク、PCの知識が必要です。でも、学生時代に似たようなアルバイトをしていたし、自分で学習していたこともあり、すんなりなじめました。

待遇に悩みませんでしたか。

 実家にいるし、あまり考えませんでした。地方なので給料は高くなかったです。前職よりは下がりました。でも、勤務は楽でした。完全に午前9時に始まって午後5時に終わっていたので。