転職は、人生における大きな決断のひとつである。人はどんなときに、会社を辞める決心をするのか。そして、次の職場をどのように探しているのか。今回は、住宅メーカーからIT企業に転じ、カスタマーサポートを長く担当する大杉隆之介さん(仮名)の転職に迫る。

どんなお仕事をしていますか。
東京都内にあるIT系のベンチャー企業で働いています。カスタマーサポートや人事を担当しています。
転職は何回されていますか?
2回です。僕は北海道出身で、地元の大学を卒業し、最初は地元の住宅メーカーに入社しました。大学では福祉を専攻していたので、介護など福祉関係の職に就くという選択肢もありました。ただもっと広い視点で福祉を捉えたときに、いろいろな人が快適に暮らすには住環境を整えることも重要だと考えるようになりました。それで、住宅メーカーの営業の道を選びました。
でも、1年足らずで辞めました。
何か問題があったのですか?
入社してみたら、めちゃくちゃブラックだったんです。
仕事内容は、自社の住宅に住む顧客を訪問して、リフォームや住宅診断の案内をすることでした。仕事自体には何の不満もなかったのですが、会社の体質が僕には合いませんでした。絵に描いたような旧来型の日本企業で、年功序列がはっきりしていました。
新入社員は、朝は誰よりも早く来て先輩たちのコーヒーを入れる。夜は、やることがなくても、上司や先輩より先には帰れない。毎日、23時頃までオフィスにいましたね。
長時間働くことに不満があるというより、合理的な理由もなく会社に拘束されるのが嫌でした。このまま会社の駒として働き続けるのか……と思ったら仕事がつまらなくなって。それで、辞めようと決めました。
勇気は要りませんでしたか。
それなりに思い切りが必要でしたが、ものすごく勇気を出したという感じでもなかったような。もともと、僕はいろんなことをノリや勢いで決めるタイプで、そのときも「なんとかなるだろう」と考えていました。
当時は今のように売り手市場ではありませんでしたし、親からも「せっかく新卒で入った会社を捨てていいのか」と言われました。でも、自分の思いをきちんと話したら理解してくれました。
次の会社はどう探したのですか?
求人雑誌を眺めていて、たまたま大手IT企業が求人していたコールセンターの契約社員の職を見つけました。北海道にはコールセンターが多いので、求人はわりとありました。書類を出したら面接に呼ばれて、1回で採用が決まりました。未経験だったので1カ月ほど研修を受けた後、電話で顧客からの問い合わせを受けました。
最初は、ここに腰を据えて就職しようというよりも、次の会社を見つけるまでのつなぎで働こう、というくらいの気持ちでした。でも、2年目には社員登用のオファーがあり、契約社員から正社員になりました。結果的に、その会社で6年も働きました。