植物由来の新材料として話題の「セルロースナノファイバー(CNF)」。水面下で実用化に向けた開発が急ピッチで進んでいる。CNFが備える変幻自在の特性から、意外な機能を引き出す開発が行われているのも特徴の1つだ。これまで、CNFは単体では強度がそれほど高くないと言われてきた。強化材として樹脂に混ぜてCNF強化樹脂にするのはそのためだ。ところが、構造材として使える強度を持つ100%CNFで出来た歯車が登場した。
100%のセルロースナノファイバー(CNF)で強度を要する材料、すなわち構造材を造る開発を進めているのが、モリマシナリー(岡山県赤磐市)だ。実は、CNFは単体では強度が低く、構造材としては使えないというのがこれまでの「常識」だった。構造材としての開発の主流は、CNFを強化材に使うCNF強化樹脂となっている。この常識を覆すべく、同社が開発したのが100%CNFで造った歯車である(図1~3)。
100%CNF製の歯車は、直径が60mm程度で厚さが20mm、歯数は28。質量は60gと、鋼製歯車の350gと比べて、実に8割を超える軽量化を実現している(図4)。それでいて、高機能な樹脂であるエンジニアリングプラスチックを超えるスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)並みの特性を誇る。
具体的には、曲げ強さが114MPa(メガパスカル)で、剛性の指標となる曲げ弾性率は1万1042MPaだ。スーパーエンプラの代表格であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)と比べると、曲げ強さは3/4程度まで迫り、曲げ弾性率については2倍を超える。おまけに、表面硬度も高い。ショア硬さは80程度と、焼き入れを施したモリブデン鋼に匹敵する硬さだ。比重は1.5で、これもPEEKの1.3に近い。