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外壁が急激に延焼したロンドンの火災を見て、日本の防災専門家の多くが既視感を覚えた。過去にも中国や中東などで高層建築の外装材が炎上する火災が発生していたからだ。いずれにも外断熱方式が延焼拡大の要因として注目を集めた点が共通する。

 英国・ロンドン市西部の高層公営住宅「グレンフェル・タワー」で火災が発生したのは、2017年6月14日午前1時20分ごろ(日本時間同日午前9時20分ごろ)だった。約120世帯が入居する建物は最上階まで炎に包まれ、黒くすすけた焼け跡が残された。

 報道や公開図面などを分析した日本の防災専門家の多くは、「外装の広範囲に及ぶ延焼が被害を拡大した」と指摘する。東京理科大学総合研究院の小林恭一教授は、「問題の高層住宅は16年に外壁を含む大規模改修をしている。それがあだとなった」と話す〔写真1〕。

〔写真1〕断熱材がむき出しになったグレンフェル・タワーの外壁
〔写真1〕断熱材がむき出しになったグレンフェル・タワーの外壁
ロンドンの火災ではグレンフェル・タワーの外壁が延焼した。断熱材に使われていたポリイソシアヌレートフォームは難燃性が高いとされるが、その急激な燃え広がりが延焼拡大の一因とみられている(写真:野城智也・東京大学生産技術研究所教授)
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 グレンフェル・タワーは1974年に竣工し、直近の大規模改修(2016年5月完了)で外断熱方式を導入した。既存のコンクリート躯体(壁厚250mm)に難燃性が高いとされるポリイソシアヌレートフォームの断熱材を張り、通気層を設けたうえで、金属系被覆材で覆った〔図1・2〕。小林教授は、この通気層に炎が入り込んだとみている。通気層の「煙突効果」が延焼を助長し、断熱材を燃やしながら急速に上層階まで延焼した可能性が高いという。

〔図1〕被覆材と断熱材の間に通気層
〔図1〕被覆材と断熱材の間に通気層
グレンフェル・タワーの外壁の構成(左)と矩計図(右)。既存のコンクリート躯体に断熱材を張り付け、被覆材にはウレタンフォームなどの芯材を亜鉛板で挟み込んだ「サンドイッチパネル」を使用していたとみられる(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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〔図2〕柱の通気層が炎を上層階に運んだか
〔図2〕柱の通気層が炎を上層階に運んだか
柱部分の水平断面図。外装材などを取り扱う日本の建築資材関係者はファイアストップがあったとみているが、通気層に侵入した炎が上層階に運ばれたと推測している(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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