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海外で目立つ高層外壁火災

 外装の金属系被覆材は初期の消火活動も妨げたとみられる。火元は居住フロア4階(地上8階相当)とする証言が多く、一般的に消防車の放水ならば十分に届く高さだ。消防隊は通報から6分で現場に到着しているが、小林教授は「外から放水しても外装が遮るため、通気層内の炎まで届かない状態だったのではないか」と推測する。

 建物火災の炎は酸素を求めて上方向に進む。外装材を取り扱う日本の建築資材関係者は、焼け残った外壁の写真から、壁や柱に延焼を防ぐファイアストップはあったとみる。しかし、この火災では、炎が金属系被覆材のパネルの継ぎ目などから通気層に入り込み、断熱材を燃やしながら、“あみだくじ”のように、広範囲に広がったようだ。

 グレンフェル・タワーのように外装が広範囲に延焼する高層建築の大規模火災は近年、世界で複数生じている。防耐火技術に詳しい早稲田大学創造理工学部建築学科の長谷見雄二教授は、「ロンドンの火災も、近年、世界各地で発生した外断熱高層建築の火災と基本的なメカニズムは同じだ」と指摘する。

 例えば、中国では北京市で09年に、建設中のテレビ文化センター(TVCC)が全焼した〔写真2〕。高さ159m、地上30階建ての建物がわずか2時間半で焼えた。火災の原因をまとめた調査研究によると、延焼を促したのは断熱材。この建物では発泡プラスチック系断熱材の押し出し法ポリスチレンフォーム(XPS)を使った外断熱方式を採用していた。

〔写真2〕2時間半で全焼した北京のTVCC
〔写真2〕2時間半で全焼した北京のTVCC
2009年2月に中国・北京で発生したテレビ文化センター(TVCC)の火災。外断熱方式で発泡プラスチック系断熱材を採用していた(写真:日経アーキテクチュア)
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 TVCCの火災で現地調査に加わった東京大学大学院工学系研究科の野口貴文教授は当時、「火災の熱で溶けた断熱材が瞬く間に流れ落ち、上階への延焼に加えて下階にも被害を広げた」と分析している。

 同じく中国の上海市で10年11月に28階建て、高さ85mの高層住宅が全焼した事例では、上層階の住民が逃げ遅れて約60人が命を落とした〔写真3〕。被災した建物はやはり外断熱方式を採用していた。上海市の静安区政府が省エネ改修プロジェクトとして、外壁の改修やポリウレタン製断熱材の設置工事を進めていた。

〔写真3〕犠牲者が多かった上海の高層住宅
〔写真3〕犠牲者が多かった上海の高層住宅
約60人が犠牲になった大規模火災が2010年11月に発生。上海市静安区政府が省エネ改修プロジェクトで、外壁の改修や断熱材の設置工事を進めていた
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