外壁が急激に延焼したロンドンの火災だけでなく、過去にも中国や中東などで高層建築の外装材が炎上する火災が発生している。日本で外断熱を採用する建物に死角はないか。
日本の高層住宅は上層延焼の抑制効果が見込めるベランダを設置するケースが多く、外断熱方式を採用する例は一般に少ないといわれる。ロンドンの例は“対岸の火事”なのか──。
建築全般に目を転じると、「外壁火災」の事例は近年の日本にも散見される。
例えば、大阪市消防局管内で09年11月から10年4月にかけて発生した4件の住宅火災〔写真1〕。4件のいずれも、外装には硬質ポリウレタンを芯材とする金属系サンドイッチパネルを用いていた。
同消防局は延焼経路などを確認するために、高さ1層分弱の実大試験体で再現実験を実施〔写真2〕。外壁外側を加熱すると、着火からわずか1分35秒でパネルの内側が700℃に達し、芯材が燃えた。
また、国内の木造住宅では、発泡系断熱材を用いる外張り断熱工法の採用例は珍しくなく、種類も複数ある。無機系の断熱材を使う例もあるが、少数派だ。
建築基準法の防火規定上の一定地域では、「防火構造」や「準耐火構造」などの大臣認定を取得した発泡系断熱材による外断熱工法を採用することができる。防火構造の認定では、近隣火災の発生などを想定し、外装材と断熱材といった材料の組み合わせによって、所定の加熱時間に対する非損傷性や遮熱性を試験で確認している。
だが、こうした試験をクリアしても、火災リスクに結び付きかねない死角がある。
その1つは、壁と開口部の取り合いや、隅角部など部材接合部からの火の侵入。既存試験に、この点の確認・検査は含まれていない。特に開口部は、外壁の断熱材や通気層を貫通するので、火の侵入を防ぐ工夫が必要だ。例えば、直張り仕上げの湿式外断熱工法では、補強メッシュと樹脂モルタルで端部を包む「バックラップ」などの手法がある〔図1〕。
2つ目の死角は、通気層や断熱材、外装材を介して、大臣認定が想定していない上層階への燃え広がりが起こるケースだ。旧建設省はそのリスクに備えて、「準耐火建築物の防火設計指針」で、通気層内に上層階への延焼を抑えるファイアストップを3m以内の間隔で設置するように記載している〔図2〕。
建基法の00年改正以前は、建築主事が準耐火建築物にファイアストップの設置を求めるなどしていた。改正後は、建築確認業務の民間開放などに伴ってそうした対応が減り、3階建ての住宅でも設置されていない例が珍しくない。