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 「当社の会社紹介ページには、ガスインジェクションのことしか書いていない。ガスインジェクション技術では世界一だと思っている」。こう胸を張るのはジュンコーポレイション(本社群馬県安中市)代表取締役の小板橋義和氏だ。

 ガスインジェクション(ガスアシスト成形)は、プラスチック射出成形技術の一種で、通常の射出成形における充てん後の保圧工程で、窒素などのアシストガスを注入して内圧を高める手法。ひけやそり、ショートショットなどの解消の他、寸法精度も向上する。

図1:ジュンコーポレイション 小板橋社長
図1:ジュンコーポレイション 小板橋社長
(写真:ローランド・ベルガー)
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 欧州では、ガスではなく水を使うウオーターアシストの方が普及していると言われるが、同社は窒素を使ったガスアシストにこだわり、様々な技術を独自に開発して高品質なプラスチック成形の製作を実現している。特にパイプ部品については他社に真似(まね)できない長さの部品をガスインジェクションで成形できるなど、その高い技術力がジュンコーポレイションの強力な武器になっている。

図2:長物の中空パイプ部品
図2:長物の中空パイプ部品
富士スピードウエイ(写真上)と鈴鹿サーキット(下)のコース形状を模したもの。ガスインジェクションが苦手とされる長物部品の成形技術をアピールすべく制作した。長さは1600mmにもなる。パイプの外径は12mm。(写真:ジュンコーポレイション)
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 小板橋氏は、旭化成が出願したガスインジェクションの特許に早くから注目していたという。その後、ガスインジェクション技術が大きな脚光を浴び、その需要が増加したが、十分な注文があった同社は、難しいガスインジェクション成形の案件は断っていた。しかし、次第に顧客のニーズが高度化し、ガスインジェクションのような技術を駆使しないと薄肉化や軽量化といった要求に応えられなくなってきた。今ではガスインジェクションなら誰にも負けたくないとの思いが強くなり、以前なら断っていた案件も全てガスインジェクション技術で克服しようと決めている。

技術で突き抜ける

 ジュンコーポレイションがガスインジェクション技術で最初に飛躍を見せたのは、1998年の内部発泡の解消だ。内部発泡とは、注入したガスによって内壁表面に小さな気泡の粒の凹凸が出来るもの。水を通す部品の場合、カビの繁殖やカルキの蓄積が起きやすくなるとして問題視されていた。

 同社の若い2人の技術が会社に内緒でこの解決に挑戦。試行錯誤を重ねて「根性で解決した」(小板橋氏)という。実は注入する窒素ガスの圧力や流速の制御が重要なポイントだったが、2人はなぜ問題が解決できたかという原理まではつかめていなかった。それでも「やる気さえあれば何でもできると思うきっかけとなった」(同氏)。最終的には、小板橋氏が理論を構築して独自の強みに仕立て上げた。

 2007年にはガスインジェクション最大の課題とされていた「ヘジテーションマーク」の解決も果たした。ヘジテーションマークは成形品表面に生じる模様のことで、外観不良となる。プラスチック充てん後にガスを注入する際のわずかなタイムラグにより、プラスチックの流れが0.01秒ほど止まることで生じる。不良品となるため、何としても解消したかった。そこで同社は、ヘジテーションマーク生成の現象を突き止めるべく、金型の一部を石英ガラスに置き換えて内部を観察できる特殊な金型を開発。試行錯誤の末、ガスを注入する際のタイミングや流速の調整により、ヘジテーションマークの出ない成形技術を編み出した。

図3:金型内可視化技術によりヘジテーションマークの解消に成功した。
図3:金型内可視化技術によりヘジテーションマークの解消に成功した。
(写真:ジュンコーポレイション)
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 同社はその後も、技術を積み上げ、現在は50を超える独自のガスインジェクション技術を保有している。そのため、工場の設備も同社向けにカスタマイズした特別仕様が随所に見られる。

 同時に、省人化を実現すべく、ほぼ全ての成形機にそれぞれ個別の工夫を施した搬送ロボットが付帯している。現在、一層の省人化に向けて若手を中心としたチームがロボット活用の検討を進めている。