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日本のものづくりを下支えしているのは、優れた技術を持つ中小企業だと言われている。一般的な知名度こそないものの、隠れた実力を持つものづくり企業の生産現場を訪れ、その強さの秘密の一端を探ろうという趣旨の本コラム。第1回は、電線・ハーネス事業を手掛ける明興双葉(本社東京)の田富工場(山梨県中央市)の製造現場へと足を運んだ。

 「たかが電線かもしれませんが、我々の生活に不可欠なアイテムであり、人間に例えると血管や神経と同等と言っても過言ではない貴重なアイテムと言えます」――。そう語るのは田富工場を案内してくれた明興双葉常務執行役員で同工場工場長の向井博史氏だ。

 創業64年目を迎える同社は、IoT化で需要が急速に伸びているケーブルやリード線向けの銅線を造っている(図1)。といっても単なる銅線ではない。過酷な曲げ、ねじり、引っ張りなどの力が加わってもびくともしないハイテク銅線だ。それを支えているのは、極限まで銅を細くする匠の技術。直径2.6mmの銅線を、伸ばしに伸ばして同50μm(1/52)まで細くしていく。しかもその長さは165万m(1650km)。その途方もない長さの細線化を、全く線を切らすことなく成し遂げる。さらに、細く伸ばした線を繊維のように撚ったり編んだりして製品に仕上げる。そこにも匠の技術がある。

図1 明興双葉の田富工場(山梨県中央市)
図1 明興双葉の田富工場(山梨県中央市)
同社は、日本では山梨、岩手、茨城の3カ所に工場を持つ。
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