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 派遣社員が派遣先から雇用終了(雇い止め)になる案件が増えている。2015年9月に大きな派遣法改正があり、派遣期間の上限が3年で統一されたからだ。期間が3年を超えると、ユーザー企業やITベンダーといった派遣先は直接雇用の義務(労働契約申し込みみなし制度の適用)を負う可能性がある。改正からちょうど3年を迎える2018年9月を前に、この影響を恐れて派遣契約を打ち切っているわけだ。これがいわゆる「2018年問題」である。

 さらにIT業界では、派遣法改正の影響が特に大きい事情がある。IT業界では中小ソフト会社による特定派遣が広がっていたためだ。3年の経過措置が切れる2018年9月、この特定派遣も改正派遣法で廃止となる。

受難の派遣SE
受難の派遣SE
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 こう説明しても、あまりピンとこない読者がいるかもしれない。そもそもソフトウエア開発には、これまで派遣期間の制限がなかった。高い専門性を必要とする業務については「制限なし」とされていたためだ。いわゆる専門26業務の中に、ソフトウエア開発は分類されていた。これにより、派遣契約のSEやプログラマ(以下、派遣SE)は従来、同じ派遣先で期間を意識することなく働けたのだ。

改正の目的は雇用の安定だったはず

 しかし、この状況も大きく変わろうとしている。もともと派遣法改正の目的は、全ての派遣社員の処遇を改善し、雇用の安定を図ることだった。3年の上限を超えて働く場合は、派遣先での直接雇用や、派遣元である派遣会社の無期雇用化(詳しくは後述)を広げる意図がある。

 派遣SEにとっては、直接雇用のチャンスが広がる半面、3年の上限前に契約が解除されるリスクを生んだのも事実だ。

 このリスクが特に顕著なのがIT現場である。プロジェクトが長期で多忙な状況下では、派遣先も継続して派遣SEを雇いたいのが本音だ。しかし、3年を超えた場合は違法となる。かといって直接雇用として正社員にするのは、会社からブレーキがかかる。もちろん派遣先で正社員になれるケースもあるが、人件費リスクや経営状況を考慮すると、多くの派遣先はそう簡単に直接雇用に切り替えられない。結果、派遣SEは契約終了の道をたどる。直接雇用を望む派遣SEは、運も味方につけなければならない。改正派遣法の目的とは、大きくかけ離れた状況だ。

 もはや派遣SEは、気に入った派遣先で良好な関係にあったとしても、3年以内に契約を解除される可能性を抱えたことになる。派遣元での身分が無期雇用(正社員など)なら期間制限はなくなる。だが、派遣元も派遣先同様に経営状況を考慮するので、大々的に無期雇用化に踏み切れない。ここでも派遣法改正の思惑通りにはいはいかないのが現実だ。まさに「受難の派遣SE」である。