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働き方改革に加え、エンジニア不足加速の要因に

 では実際に、システム開発現ではどんな問題が発生しているのか。

 ITベンダーや派遣事業者などへの取材の結果、システム開発現場に最も大きな影響を与えそうなのは、ITエンジニアの人手不足の加速だ。「急な人材調達が難しくなるのは間違いないだろう」と、受託開発を主に手がける売上高500億円のITベンダーの調達担当者は話す。

派遣法の改正でシステム開発現場に起こる問題の例
派遣法の改正でシステム開発現場に起こる問題の例
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 もちろん現状でも、大型案件や働き方改革などの影響で人手不足が続いている。だが2018年10月以降、特定派遣会社の廃業や派遣単価の高騰などで、さらにITエンジニア不足が深刻化する可能性がある。

 例えば現在、ITエンジニアの多くが特定派遣で開発プロジェクトに参加している。これを準委任契約や請負契約に切り替えた場合、派遣先の企業が直接指示できなくなるなど、現場の業務やレイアウトなどの見直しが発生する。制度の過渡期で一般派遣のITエンジニアは多くないため、「派遣契約で調達可能なITエンジニアは当面、減りそうだ。急な人材調達に対応できない可能性が出てくるのではないか」(同)。

 さらに一般派遣の場合も、雇用の安定に向けた義務付けにより無期契約となる派遣社員が増えている。その結果、NTTデータは「契約単価の上昇傾向が見受けられる」としている。NTTデータの場合、現場への影響は「顧客や業務内容によって異なる」としているが、今後、継続的に契約単価は向上していきそうだ。

 無期雇用の派遣社員になった場合、「交通費や福利厚生費、また長期的な教育などが必要になるため、契約単価は上がる」とITエンジニアの派遣を手がけるパソナテックの錦戸新吾 執行役員 HRソリューション事業部長は話す。パソナテックでは同社に所属する派遣社員が無期雇用に転換した場合、必ず契約単価のアップを交渉しているという。日経 xTECHの取材によると単価の上昇に応じないと決めている大手ITベンダーもあるが、「今は人材不足でもあるので、単価が上がっても同じ人と契約を続けたいというニーズは高い」(パソナテックの錦戸氏)。

準委任契約の転換でノウハウの蓄積目指す

 特定派遣の終了に伴って増えているのが、準委任契約や請負契約への転換だ。これまで特定派遣の担当者が実施していた業務を準委任契約などに切り替え、以前と同様に契約する方法だ。準委任契約の場合、派遣先の企業が直接、ITエンジニアに指揮命令できなくなるので準備が必要になるなど現場への負担は高い。

 「ITエンジニアが担当する業務が同じ場合、コンプライアンス(法令順守)違反を指摘される可能性が高いのではないか」と前出の中堅ITベンダーの調達担当者は懸念する。「実際に役所で、特定派遣を準委任契約に切り替えた場合は偽装請負になっていないかを何度も聞かれた。安易に準委任契約に切り替えるのは危険で、慎重に検討するようになった」と担当者は話す。

 ただ、特定派遣が多かったITベンダーの中には、派遣法改正に先駆けて準委任や請負契約への転換を進めている動きがある。