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 その1社である富士ソフトは、「生産性向上のためにも派遣は減らし、準委任や請負契約にシフトするようにしている」と話す。「個人にノウハウが蓄積しがちな派遣形態に比べ、準委任契約などの場合はチームで業務に当たる。ノウハウが当社に蓄積することで生産性が高まりやすく、業務効率の観点でもメリットが大きい」ためだ。一方で派遣を受ける側の大手ITベンダーを中心に、「派遣の場合でも3年を超える前に交代要員の打診があるなど、派遣に関するコンプライアンス意識は非常に高まっている」(富士ソフトの担当者)という。

 ITベンダー側の意識の変化により、偽装請負や3年を超えた派遣社員の勤務など、以前のシステム開発の現場に起こっていた問題は少しずつ解消の方向に向かう可能性もありそうだ。

2018年10月以降に大きな影響が出る

 特定派遣が終了する2018年10月以降、大きな影響や混乱が生じる可能性がある。

派遣法改正によるITエンジニアやITベンダーへの影響
派遣法改正によるITエンジニアやITベンダーへの影響
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 「マニュアルを用意するなど対策はきちんと実施している。ただ、今回の派遣法の改正への対応は何が正しいのか正直分からない。現状では大きな影響はないが、10月以降は少しずつ影響が出てくるのではないか」。売り上げ規模が数千億円に達する大手ITベンダーの人事担当者は率直にこう話す。

 プロジェクト体制の見直しは必至だ。対策は派遣を受けていた側も、派遣を実施していた側も双方で模索している段階だが、派遣法の改正をきっかけに、「正社員と派遣社員が行う業務の明確化や標準化、採用や調達の見直しなどに取り組むITベンダーは多い」とパソナテックの吉永隆一社長は話す。

 「人手が足りないから派遣でITエンジニアを調達しよう」といった場当たり的な調達や、派遣のITエンジニアが同じ業務を10年以上担当するといった人材配置は今後、見直しが進みそうだ。

 ITエンジニアにとっては無期雇用や教育の機会の増加など、派遣として働くことのメリットが高まっている。ITエンジニアの転職支援を手がけるリクルートキャリアの高橋理倭 エージェント事業本部 第一エージェントサービス統括部 IT・コンサルティングサービス営業部1グループ リクルーティングアドバイザーは、「派遣であれば業務を選ぶことができる。ITエンジニアとして長期にキャリア形成を考える中で、派遣社員としてより新しい技術を使ったプロジェクトに参加し、キャリアチェンジやキャリアアップを考えるケースは増えている」と話す。

 高橋氏が支援したケースでは、メーカー系ITベンダーに勤めていたITエンジニアがより幅広い技術に触れるために派遣事業者に転職したり、サーバー側を長年担当していた40歳代のITエンジニアが新しい技術を身につけるために敢えて派遣を選択したり、といったケースがあったという。

 「システム開発の現場は、ITエンジニアの大争奪戦になっている。ITエンジニアが転職する際には、長期的なキャリア形成を考える割合も増えており、派遣という選択をしやすい状況だ」とリクルートキャリアの藤井薫リクナビNEXT編集長は話す。

 人材不足の影響で、派遣法改正の影響はまだ少ない。だが、特定派遣が終了する10月以降、どのような動きが出るか、まだまだ注視する必要がありそうだ。