「作業者が全く集まらない」──。世界中の製造業が人手不足に悩んでいる。少子高齢化が急速に進む日本の工場は特に深刻だ。こうした背景から、人手不足解消のために省人化や無人化を狙って自動化を検討するケースが増えている。だが、果たしてそれだけで競争力は高まるのだろうか。単に人を置き換えるために設備やロボットを導入しても、同じように自動化した企業同士では差が付かないのではないか。こうした問題意識を持つ日本のものづくり企業が省人化を超える“競争力を生む自動化”に動きだした。自動化に、差異化のための“価値”を加えた「自動化+α」の事例に迫る。

日本流の自動化---人手不足解消だけでは戦えない
目次
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省人化の追求だけで工場は強くなるか? 「革新的自動化」のススメ
差異化をもたらす自動化システム
「組立工場の作業者を確保できないとトヨタ自動車ですら悩み始めている」と、産業用ロボットメーカーの社員は明かします。今、日本の製造業で人手不足が深刻な域に達しているのです。しかし、単に人を減らすための自動化設備を導入しただけで勝ち残れるでしょうか。勝ち残るには「差を付ける自動化」が必要と考えた日本企…
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OKIデータの自動化ライン、強化学習で“1人5役”のロボットが高効率動作
自動化+AIによる自動改善、複雑な制御をシンプル化
自動化装置間のワークの搬送設備には意外と多額の投資が必要です。これを双腕型(人型)ロボットに任せると、投資額を削減できます。ただし、ロボットに複雑な動作をさせることになり、指示をどう出すかが問題になります。OKIデータは、人工知能(AI)の1つである強化学習を応用して解決、人の指示より速く動く生産…
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カシオの時計自動組み立て、人手の複雑な組み立て動作を完全コピー
自動化+ブランド徹底、自動化のため製品設計を妥協しない
人手不足を背景に自動化のニーズが高まっている。だが、単に人を減らすための設備やロボットを導入しただけでは、差異化を図るのは難しい。今回は、自動化の都合よりも製品ブランドの維持徹底を優先し、製品設計をあえて一切変更せずに、これまでの手作業の微妙さを完全に模擬するという困難な自動化に挑戦した組み立てラ…
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ダイキン工業の自動化戦略、人との協調で進化を止めない
自動化+改善し続ける、人がロボットの動作を観察してムダ削減
自動化には進化を止めてしまうリスクがあります。ロボットや設備をそのまま導入すると、造り方が固定されてしまうからです。これでは日本の強みである現場力が高まりません。そう考えたダイキン工業が、国内の新工場で生産現場の進化を支える改善を継続する自動化設備を実用化しました。
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超高張力鋼板とAl合金の直接接合を1点2秒以内で自動化、神戸製鋼所+ファナック
自動化+異種材料を接合する、自動車ボディー軽量化で逆転狙う
複数の異なる材料を適材適所で使う「マルチマテリアル」設計。クルマのボディーでは欧米に日本企業は後れていると言われます。ところが、欧米企業がまだ使っていない超高張力鋼板とアルミニウム合金の異種材料接合をこなす自動化設備が日本から登場しました。実用化できれば、先行する欧米企業に追いつき、追い越せるかも…
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AGVを止めずに製品をつかみ作業時間を38%削減、日立製作所
自動化+スピードを高める、ピッキングシステムを効率化
物流倉庫や工場の部品配膳の現場では、人手不足を背景にピッキング作業の自動化のニーズが高まっています。しかし、素早く作業する必要があり、単にロボットを取り入れるだけでは倉庫や工場全体の仕事が停滞してしまう可能性があります。スピードを高めることでライバルに差を付ける自動ピッキングシステムが登場しました…
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ミリ波レーダー対応エンブレムの製造を自動化、東芝機械エンジニアリング
自動化+高付加価値製品を造る、5工程を集約してロボットで搬送
人手不足を背景に自動化のニーズが高まっています。しかし、単に人を減らすための設備やロボットを導入しただけでは、差異化を図るのは難しいというのが実態です。省人化に加えて、付加価値の高い製品として「ミリ波レーダー対応エンブレム」を造れる自動化システムの事例を紹介します。