日本人設計者が中国メーカーと一緒にものづくりをすると、不良品発生などのトラブルが起きることがあります。しかし、その本当の原因は中国に無理解な日本人設計者にあるかもしれません。駐在の4年半を含めた7年間、中国でのものづくりに関わった私が、失敗経験を紹介しつつ、その理由を分かりやすく解き明かすこの連載。前回(2019年6月号)までは情報の出し方や会話など「ヒト」に関するポイントを紹介してきました。今回は「モノ」に着目して中国メーカーとの付き合い方を紹介します。
不良が多発、改善も進まない事態が発生
私が中国に駐在していた時の話です。同僚が担当していたある外注部品で、量産試作の段階で不良が繰り返し発生し、なかなか改善が進まないという事態に遭遇しました。量産開始までに1カ月ほどありましたが、最後の詰めの段階です。同僚1人で改善を進めるのはなかなか難しいため、私がサポートに入ったのです。
対象となったのは、液晶モニターの外周を額縁のように覆っている「ベゼル」と呼ばれる部品です(図1)。アルミニウム合金を押出成形し、複数の2次加工と組み立てを経て完成させます。一般的にベゼルは四角形なのですが、今回のモデルは六角形でやや複雑な形状です。これも不良の改善がなかなか進まなかった原因の1つと言えます。
不良の内容は非常に多岐に渡っていました。例えば、曲げ角度が不安定、押出材端面の結合部の段差が目立つ、面取り加工量が不安定、インサートナットの脱落といった具合です。部品の製造を依頼していたアルミ押出材の加工メーカーは、日本だけでなくさまざまな海外メーカーからの発注を多く受けている実績があるメーカーでした。
私がまず、この加工メーカーを訪問し、工程の確認を行いました。具体的には、材料の受け入れから出荷までの全工程をQC工程表に沿って確認したのです。この部品は、購入品であるアルミ押し出し材に対する複数の曲げ加工や表面処理、組み立てといった工程で完成させられており、全部で39工程もありました。私がそれまで担当した部品の中では最も多い工程数でした。