私たち日本人は日ごろほとんど意識していませんが、実はとても曖昧な言葉や文字で仕事を進めています。例えば、打ち合わせにおいて「ご配慮のほど、よろしくお願いいたします」と言ったり、メールで「スムーズに開閉できるように修正して下さい」と指示を書いたりします。しかし、中国人やその他の外国人と仕事上のやりとりを行う場合、このような曖昧な表現はトラブルの原因になってしまうのです。
日本人同士であればこのような表現をしても、お互いに同じような価値観で仕事をしているので、曖昧な部分は共通の知識や認識、理解で補完できます。また、その価値観に微小な差があると感じたら、「あうんの呼吸」で相手の気持ちを推し量ります。そして大きな差があると感じたら、電話で確認をします。
しかし、中国人やその他の外国人が相手となると、なかなかそうはいきません。このような「言葉や文字の曖昧さ」に関しては、本コラムの5回目と13回目でもお伝えしましたが、今回は中国でのトラブルにつながりやすい日本人設計者の図面の曖昧な表記についてお伝えします。
図面の曖昧な表記は大きく6種類
図面は誰のために描くのでしょうか。主には設計者自身と部品を作製する部品メーカーの担当者(金型や加工プログラム作成の担当者など)、そして部品を測定・検査する担当者です。それ以外にも、部品を発注する購買担当者や製造担当者なども見るでしょう。
さまざまな人が図面を見るに当たり、中国でのトラブルの原因となりやすい曖昧な図面表記を分類すると大きく6つに整理できると私は考えています(図1)。具体的には、[1]部品メーカーに選定や判断を委ねた表記、[2]「あうんの呼吸」に頼った表記、[3]検査方法が分からない表記、[4]測定できない寸法表記、[5]管理寸法が分からない図面、[6]カタカナ表記、です。
図2は板金部品の図面の例ですが、この中には曖昧な表記が数多く含まれています。このままでは中国でトラブルが発生する可能性はかなり高くなります。以下では中国でトラブルを引き起こしやすい図面の表記について、1つずつ説明していきます。