中国の部品メーカーを訪問する際に、私はその会社の製造ラインでの作業方法や使われている治具、加工や組み立てに使う装置や設備をよく確認するように心がけていました。不良品の発生につながる作業や手順を見つけるためです。見つけたらその改善を依頼します。すると、ラインリーダーからは必ずこんな答えが返ってきます。「検査する(検査を増やす)から問題ない」。きちんと検査するので、不良品が発生しても出荷されない。だから問題ないという理屈です。
私が中国での部品作製に携わった最初の頃は、このように言われると、「不良品が納品されなければ、まあいいか」となんとなく納得していました。しかし、ある時からこのような言葉に決して納得してはいけないと考えを改めました。そこで、「検査は不良品の有無を調べて、不良品の出荷を防ぐ工程です。不良品を発生させないための作業改善ではありません」と説得して、改善してもらうようにしました。
製造ラインの作業改善の代わりに検査を厳しくしたり増やしたりするのは、不良率を上げコストアップにつながるだけです。作業改善しなければ、不良品はいつまでも製造され続けてしまいます。検査した結果を解析し、その結果を基に製造ラインの作業を改善するのが検査本来の目的です。「検査するから大丈夫」と言って作業を変更したがらないラインリーダーに対しては「検査」の意味をしっかり理解してもらい、作業改善をしてもらっていました。
今回は「検査」にまつわるさまざまな注意点に関してお伝えします。もちろん、検査はきちんと実施しなければ意味はありません。前半では検査そのものに関する注意点、後半では検査で問題が発生した(不良品が見つかった)場合の対応について説明します。