私たち日本人には、相手を信頼して「一任」する形で仕事を進める人が多いと思います。「結果的にスペックに入れば良いので、改善方法はお任せします」と打ち合わせで言ったり、「強度は10N以上のこと、測定方法は一任」と図面や仕様書に書いたりした経験があるはずです(本コラムの第17回参照)。
このような表現を日本人設計者がする理由の1つには、「相手側にも都合(持っているスキル、装置などの違い)があるので、結果に至るまでの方法までは指定しません」という意味合いを含めていると考えられます。もう1つ、日本人の技術者同士で価値観が近く、「想定外のことはしないであろう」という信頼感を抱くからだと思います。
日本人設計者が商社やOEM(相手先ブランドによる生産)/ODM(相手先ブランドによる設計・生産)メーカーに仕事を依頼するときも同様です。窓口となっている担当者(多くは営業担当)を全面的に信頼し、必要な情報を全て伝えさえすれば製品は間違いなく出来上がってくると考えるでしょう。
しかし、中国で仕事をする場合には、その「一任」が通用しない場合があります。窓口の担当者と何回か面識があったり、日本人同士であったりすると、ある程度は信頼感を持って「一任」できますが、実際に部品を造っている部品メーカーの担当者にまでその「一任」が通用するとは限らないのです。