大手デベロッパーの三菱地所が、都市部の中大規模、中高層建物を中心に、木材活用の試行を重ねている。複数のプロジェクトで木造を試みた結果、実感としてつかめたメリットや課題を、同社の柳瀬拓也氏が語った。
三菱地所グループは、ビル以外にも住宅や商業施設、ホテルなどを手掛けている。大ざっぱにくくれば大型の中高層建物をつくっていると言える。そうした建物に、どのように木造・木質化を組み込めるのか。当社では2年ほど前から木材に関心を持ち、木材を活用した新しいビジネスモデルを模索している。
現在、木造を取り入れるプロジェクトは、進行中が2件、予定しているものが2件ある。進行中のものは、「下地島空港旅客ターミナル施設」と「(仮称)仙台市泉区高森2丁目プロジェクト」の2件だ。
下地島空港旅客ターミナル施設は、沖縄県の宮古島と橋でつながった下地島にある空港施設で、2017年秋に着工した。鉄筋コンクリート(RC)造で壁を立ち上げ、CLT(直交集成板)の屋根を架ける。
CLTの屋根は2種類ある。1つは、フラットスラブのように平らに架けるもの。もう1つは、集成材の梁にCLTを載せて寄棟屋根にするものだ。どちらも耐火要件が求められない建物なので、CLTなど構造部材として用いた木材は現しとする。現しの木材の使い方は、空港に降りたところからリゾートが始まるというイメージとマッチする意匠ともなる。
「(仮称)仙台市泉区高森2丁目プロジェクト」も施工中で、地上10階建ての賃貸マンションになる。ここでは木材を3種類の構造部材に用いている。4~10階までの床を2時間耐火仕様のCLT、1~5階までの耐震壁をCLT、そして2時間耐火仕様の竹中工務店の耐火集成材「燃エンウッド」を一部の柱で使う。
このプロジェクトで初めて床にCLTを使ってみたが、現場を見た印象は、施工が非常に速いというものだった。在来工法の床と比べて職人の数も少なく済み、大幅に省力化できていることを実感した。
これら2件のほか、現在、予定しているプロジェクトでは、仙台のCLT床の進化版や、耐火仕様にかかるコスト低減の工夫などを目指して取り組んでいる。