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 おざなりになりがちな基礎工事の欠陥事例を紹介する。鉄筋のコンクリートかぶり厚を守っていないと建築基準法違反となり得るので注意したい。(日経ホームビルダー)

 「ダメだダメ。工事は中止。建築違反のままじゃ進められない。今から直せないなら解約だ!」――。ある新築の現場で建て主の怒りが収まらない。

 原因は、基礎工事での不備。打設した際、鉄筋のコンクリートのかぶり厚が不足していたことが発端だ。しかも、「1カ所だけ5mm足りていない」と建て主は指摘し、工事中断を主張した。「この程度は誤差の範囲で問題ない」と工務店の担当者は説明するものの折り合いがつかず、現場は5カ月以上止まった状態。今もまだ再開できていない。

建て主は基礎を重視

 このような光景は笑い事ではない。あなたの現場でも起こり得る話だ。かぶり厚不足は、意外と多くの現場で見掛ける不備だ。私が調査した新築の配筋検査でも、この手の不備を指摘することが少なくない。

 中でもよく見掛けるのが、べた基礎のスラブ筋下部のかぶり厚不足だ。鉄筋に人などが乗ってしまい、かぶり厚を確保するための治具であるスペーサー(サイコロ)が沈んでしまったケースや、不陸などで床の水平精度が悪いケースなどが主な原因だ〔写真1〕。このような場合、建築基準法で定められているかぶり厚(60mm以上)を満たしていないことがほとんどだ。

(写真:カノム)
(写真:カノム)
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 不備に気が付いても、「コンクリートを打設してしまえば分からなくなるからいいや」と考えてしまってはいないだろうか。だとすると、危険だ。その考えがトラブルの火種となる。

 最近は、品質を気にする建て主が増えている。特に基礎を重要視する人が少なくない。基礎工事時は現場に入りやすいこともあって、建て主が確認しやすい。もちろん素人が現場を見ても、施工の良しあしは判断できないだろう。だが、最近の建て主は実によく規準を調べている。かぶり厚の規定など、ポイントを押さえてくることが非常に多いのだ。

 かぶり厚不足は、見た目だけでなく実際に測ったりすることで分かるため写真などにも残りやすい〔写真2~5〕。このような不備を見つけたら、建て主に指摘される前に、しっかりと修正しておきたい。

〔写真2〕スラブに鉄筋が接触。修正が必要な箇所だ(写真:カノム)
〔写真2〕スラブに鉄筋が接触。修正が必要な箇所だ(写真:カノム)
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〔写真3〕基礎の立ち上がりを上から見た様子。写真中央を縦に走る鉄筋が左に寄っている(写真:カノム)
〔写真3〕基礎の立ち上がりを上から見た様子。写真中央を縦に走る鉄筋が左に寄っている(写真:カノム)
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〔写真4〕V字型の補助筋が下がりすぎて、ほぼスラブに接触している(写真:カノム)
〔写真4〕V字型の補助筋が下がりすぎて、ほぼスラブに接触している(写真:カノム)
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〔写真5〕ハンチの形状ぎりぎりに根切りされているため、かぶり厚が確保できない状態(写真:カノム)
〔写真5〕ハンチの形状ぎりぎりに根切りされているため、かぶり厚が確保できない状態(写真:カノム)
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 前述の事例でも、ネットで情報を調べていた建て主が、打設前にかぶり厚が足りないことを指摘していた。施工者は修正したうえで工程を進めた。だが、その様子を撮影していた建て主。写真から、かぶり厚が5mm足りない状態でコンクリートが打設されていたことが発覚した。これが、建て主の怒りの火に油を注いでしまった。