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量子コンピュータにカネとヒトが猛烈に集まり始めている。量子コンピュータが実用的な性能を発揮する「Xデー」が迫っているとの期待が高まっているからだ。この熱狂に根拠はあるのか。ブームは本物なのか。そしてXデーはいつなのか。最新動向を検証する。

 実用化が始まる前に、量子コンピュータの世界で早くもユーザー企業やスタートアップを巻き込んだエコシステム(生態系)の競争が始まった。自社の量子コンピュータをなるべく多くの企業に使ってもらうことが、他のメーカーに対する優位性につながるとの考えが背景にある。米IBMや米グーグル(Google)は仲間作りを急ぐ。

 米シリコンバレーの中でもベンチャーキャピタル(VC)が集まることで知られるメンローパーク。同地の高級ホテル「ローズウッド・サンドヒル」に2018年4月のある日、100人を超えるスタートアップの起業家やベンチャーキャピタリストが集まった。

 会合の主催者はIBMだ。同社はこの日、スタートアップを対象にした量子コンピュータへの早期アクセスプログラム「IBM Q Network for Startup」を発表。集まった起業家に対して量子コンピュータ向けソフトウエアの開発を促し、ベンチャーキャピタリストには量子コンピュータ分野での起業の重要性を訴えかけた。

 「IBMの量子コンピュータのエコシステムを、大企業だけでなくスタートアップにも拡大することが狙いだった」。会合のホスト役で、IBMがシリコンバレーに設ける「IBM Research - Almaden」でバイスプレジデント兼ラボディレクターを務めるジェフ・ウェルザー氏はそう語る。

「IBM Research - Almaden」でバイスプレジデント兼ラボディレクターを務めるジェフ・ウェルザー氏
「IBM Research - Almaden」でバイスプレジデント兼ラボディレクターを務めるジェフ・ウェルザー氏
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 IBMが量子コンピュータへの早期アクセスプログラム「IBM Q Network」を開始したのは2017年12月のこと。一般ユーザーが利用できるのは16量子ビットのハードウエアであるのに対して、早期アクセスプログラムのユーザーは20量子ビットの最新ハードウエアを利用できる。IBMによる量子コンピュータの利用支援なども提供する。

 先に始まったIBM Q Networkは、大企業を中心とするユーザー企業向けの取り組みだ。それに対して後からスタートアップ向けの取り組みを追加した。なぜIBMはユーザー企業だけでなくスタートアップにも、量子コンピュータを使ってもらおうと働きかけているのか。

NISQの可能性をユーザー企業と探索

 IBMが現在提供する量子コンピュータや、今後数年の間に登場する予定の量子コンピュータは、いずれも「NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer、ノイズがありスケールしない量子コンピュータ)」と呼ばれるものだ。

 NISQが実用的かどうかは、実際に使ってみなければ分からない。そこでIBMは早期アクセスプログラムを設けて、製造業や金融機関などのユーザー企業に量子コンピュータを試してもらおうとしている。

 日本企業ではJSRや日立金属、本田技術研究所、長瀬産業、慶應義塾大学がIBM Q Networkに参加している。日本支部的な「IBM Qネットワークハブ」には三菱UFJ銀行、みずほフィナンシャルグループ、三菱ケミカルが参加する。海外企業では米JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)や独ダイムラー(Daimler)、韓国サムスン電子、英バークレイズ(Barclays)などが名を連ねる。

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