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 瞬間移動の仮想体験、乗ると元気になるヒコーキの開発、客室乗務員向けアプリの刷新、データセンター移転…。ANAホールディングスは様々な先進技術を使い、新たなビジネスモデルを構築する。奇想天外、超先進的なデジタルイノベーションの全貌に迫った。

 ANAが取り組んでいる主なデジタル化案件をざっとまとめただけでも、10件以上ある。まずは瞬間移動の仮想体験から。ロボットやVR、ハプティックス(触覚)技術などをフル活用する。

 自分の分身となるロボットが観光地を旅行。本人は自宅にいながらロボットを遠隔操作し、VR(仮想現実)で現地の雰囲気を楽しむ。ANAホールディングスが計画している新事業「AVATAR(アバター、分身のこと)」のイメージだ。プロジェクト名は「ANA AVATAR VISION」である。

 瞬間移動の仮想体験――。航空事業とは直接関係ない取り組みに見えるが、ANAは本気である。これまでにないサービスを早急に創出し、事業を拡大するためだ。

 同社は最先端技術の開発コンテストを主催する米XPRIZE財団と、日本企業としては初めて提携。「ANA AVATAR XPRIZE」という名称で、国際的な賞金レースを開始した。開催期間は2018年から2021年までの4年間。AVATAR事業の実現に向け、優れた技術を開発したチームには、ANAが総額1000万ドル(約11億円)の賞金を贈る。ケタ外れな金額のコンテストである。

「ANA AVATAR XPRIZE」のWebサイト
「ANA AVATAR XPRIZE」のWebサイト
(出所:米XPRIZE財団)
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 「AVATAR事業を実現するには、ロボティックスやVR、AR(拡張現実)、センサー、通信、ハプティックス技術など、複数の先進テクノロジーを組み合わせて使うことになる。ANA AVATAR XPRIZEを開催することで世界中の知恵を集結し、1日でも早く事業化したい」。ANAホールディングスの津田佳明デジタル・デザイン・ラボ チーフ・ディレクターはこう意気込みを語る。

 賞金レースとは別に、ANAが独自に実証実験や試験サービスを進めているものも数多くある。例えば、遠隔地にいながら水族館の様子をリアルタイムに鑑賞できる施設や、空港スタッフのAVATARが顧客を案内するサービスなどのデモを開発済みだ。

遠隔操作でロボットを操作するデモ
遠隔操作でロボットを操作するデモ
(出所:全日本空輸)
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遠隔地から旅先のAVATARを動かし、リアルタイムで水族館を体感するデモ
遠隔地から旅先のAVATARを動かし、リアルタイムで水族館を体感するデモ
(出所:全日本空輸)
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空港スタッフのAVATAR(画面の女性)が顧客を案内するデモ
空港スタッフのAVATAR(画面の女性)が顧客を案内するデモ
(出所:全日本空輸)
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 ANAがAVATAR事業で目論むのは、旅行や空港業務の代替だけではない。医師や教員が不足している地域や、人間が立ち入れない災害現場などにAVATARを送り込む。時間と空間を越えて、人々(の分身)が活躍できる社会の実現を目指している。

 「AVATAR事業の発端は、どうすれば物理的な瞬間移動を実現できるか、といった議論だった。専門家にもヒアリングして本気で考えたが、あと100年はかかるだろうとのことだった。そこで現在の技術でも実現の可能性が高い瞬間移動の仮想体験であるAVATARを目指すことにした」(津田チーフ・ディレクター)。

 大分県にあるテストフィールドでは、AVATARを使って地球にいながら月面に施設を建設するという壮大な実験にも取り組んでいる。デジタル技術によって新サービスを生み出そうとしている企業は多いが、ANAのようにスケールの大きな取り組みを真剣に進めているケースは珍しい。

ドローンの事業化はルール策定から積極関与

 AVATAR事業は2018年度から2022年度までの中期経営戦略に基づくプロジェクトである。2022年度にANAは、売上高に相当する営業収入を2兆4500億円(2017年度比で約24%増)、営業利益を2200億円(同約33%増)まで拡大することを狙っている。実現に向けて、ANAは「オープンイノベーションとICT技術の活用」を戦略の柱の1つに掲げている。AVATAR事業は、その象徴的なプロジェクトだ。

 AVATAR事業以外にも、ANAは数々のデジタル戦略プロジェクトを進めている。本業である航空事業の業務生産性を高めるものから、一見すると航空事業とは関係ないように思える新事業、飛行機に乗らずに済むことになりそうで本業に悪影響を与えそうに思えるサービスまで幅広い。現在進行中の主なプロジェクトを、事業内容(航空事業/非航空事業)とテクノロジーの先進性(先進テクノロジー/既存テクノロジー)の2軸で整理したのが下の図だ。

ANAが進めるデジタル戦略プロジェクトの位置づけ
ANAが進めるデジタル戦略プロジェクトの位置づけ
(日経 xTECH作成)
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