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 瞬間移動の仮想体験、乗ると元気になるヒコーキの開発、客室乗務員向けアプリの刷新、データセンター移転…。ANAホールディングスは様々な先進技術を使い、新たなビジネスモデルを構築する。奇想天外、超先進的なデジタルイノベーションの全貌に迫った。

 ANAグループは最新テクノロジーを駆使して業務を効率化する、デジタル戦略プロジェクトを推進中だ。キーワードは「ダンゴムシ探し」。ダンゴムシの正体とは何か。

 「業務のデジタル化は、従来のシステム開発とはプロジェクトの進め方が大きく異なる」。全日本空輸(ANA)のIT部門である業務プロセス改革室の野村泰一イノベーション推進部 部長はこう言い切る。野村部長が率いるイノベーション推進部は、既存業務にデジタル技術を適用することで効率を高めることを専門に請け負う変革組織である。

 従来のシステム開発では、事業部門がシステム開発の要望を出すところから、プロジェクトがスタートする。要望を聞いたIT部門はROI(投資対効果)を精査し、プロジェクト開始の承認を出す。しかし、こんなやり方をしていては「デジタル化は到底、前には進まない」と野村部長は指摘する。

 野村部長がデジタル化の標的にしているのは、現場の担当者が「昔から続けてきた仕事のやり方なので、多少の不便は仕方ない。もう慣れっこ」と諦めているような業務。もしくは当事者にとっては当たり前にしか思えず、改善しようと思いもしない業務だ。イノベーション推進部はこうした業務を社内から探し出す。これまでの慣習や常識で埋もれてしまった不満を掘り起こし、解消することが生産性の劇的な向上につながると野村部長は考えている。改善すれば効果を上げられる業務は、社内にいくらでも転がっているということだ。

 「既存業務のデジタル化で重要なのは、社内の常識を壊すこと。担当者が変更の必要性を感じていない業務でも、仕事のやり方を改善すれば何らかの効果が得られるようなものには、遠慮なくメスを入れていきたい」(野村部長)。

 では、凝り固まった社内の常識を打破するには、どうすればよいか。これまでのように、事業部門から要望が挙がって来るのを待っていては何も始まらない。そうではなく、IT部門から積極的にデジタル化の提案をしに行く。それで事業部門と合意できれば、IT部門自身が手早くシステム開発して提供する。こうしたスピード感のあるシステム開発を、ANAは既に採用し始めている。

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 ここで重要になるのが、事業部門への改善提案の伝え方だ。その極意を野村部長は「ダンゴムシ探し」と表現する。ダンゴムシの意味するものは大きく2つある。

 1つは、IT部門から積極的に動いて、デジタル化すべき業務を見つけること。ダンゴムシは普段、石の下に隠れていることが多い。そのため、石をどかさなければ、ダンゴムシを見つけられない。このように、IT部門からアクション(石をどかす)を起こさないと、デジタル化の対象業務(ダンゴムシ)を発見できないわけだ。従来のように、事業部門からの要望を待っていたのでは、いつまでたってもダンゴムシを捕まえられない。

 もう1つは、デジタル化に反対する現場の理由や抵抗勢力を取り除くことだ。「デジタル化すべき業務を見つけ、IT部門から改善案を提示したとしても、事業部門から反対されることはよくある」と野村部長は語る。事業部門は業務を変える必要性を感じていないので、そもそも改善に乗り気ではないのだ。

 しかも事業部門が抵抗するのは、彼らなりの相応な理由がある場合がほとんど。その理由を先ほどと同じく、野村部長は石に例えて、「ダンゴムシを捕まえるには、まず石(抵抗する理由)を取り除かなければならない」と話す。

 事業部門はコストと手間がかかることを懸念して、IT部門の提案を拒否してくるケースが多い。要は面倒なのだ。そこでシステム開発や運用にかかるコストはIT部門が負担したり、要件定義の手間を軽減したりする提案も一緒にする。こうして1つずつ、抵抗という名の石を取り除いていく。地味で根気の要る作業だが、石をどかさなければ、ダンゴムシの姿は見えてこない。