東レは、シートバック(シート背面部の部品)を軽量化できる加工技術「ハイブリッド射出成形技術」を開発した。高い強度を必要とする部分に熱可塑性UDテープ(後述)を使い、金型に入れて射出成形(インサート成形)する。これにより、鋼製のシートバックを樹脂製に変えて30~50%軽量化できる。新しい加工技術を使い、同社はシートバックのサンプルを製作した(図1)。
鋼で出来たシートバックを樹脂化することで軽くした。サンプルのため、乗員の背中を支える部分を省略して幅を狭めている。
新しい熱可塑性UDテープは、一方向に束ねた炭素繊維に熱可塑性樹脂であるポリアミド(PA)6を含浸させたもの(図2)。炭素繊維強化樹脂(CFRP)のテープ状中間基材だ。炭素繊維が連続繊維となっているため、特に強度に優れる。PA6の割合は40質量%で、炭素繊維のそれは60質量%である。テープの幅は30mmとなっている。
シートバックのサンプル品そのものの強度は計測していないが、試験片は調べた。厚さが2.4mmのガラス繊維強化PA6を、厚さが0.3mmの2枚の熱可塑性UDテープで上下から挟んで作った試験片だ。ガラス繊維の含有率は30質量%である。その結果、曲げ強さは550MPaと、ガラス繊維強化PA6単体の270MPaに対して2倍以上になった。