「日本全員で勝ち取った金メダルだ」「本当に難しい大会だったが、まずは勝つことができて嬉しい」
2018年9月1日、インドネシア・ジャカルタで開かれたアジア競技大会。eスポーツの日本代表チームが優勝し金メダルを獲得した。野球や陸上といった伝統的なスポーツ競技に混じり、デモンストレーション競技という位置付けながらeスポーツが初めて採用された。
アジア競技大会の競技種目になり、将来のオリンピック種目入りも噂されるeスポーツ。このeスポーツを支える技術開発をIT企業が急いでいる。
会場内の数百人に映像配信
いち早く動き始めたのがNTTグループだ。「eスポーツは最先端のデジタル技術なしには成り立たない産業で、IT企業が大いに活躍できる。近い将来、大きくブレークする可能性があるので足場を固めておく」。NTTデータの高島正幸ITサービス・ペイメント事業本部メディア統括部サービス企画担当部長は、こう意気込みを語る。
eスポーツを支える先端技術と開発に注力する主な企業
* 傘下の米ツイッチが開発・運営
技術名 | 内容 | 企業 |
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5Gを使った低遅延の対戦システム | 有線(光回線)が主流の大会会場LANを(5G回線)で構築した遅延のない対戦システム | NTTドコモ |
VRやARを使った大会観戦技術の開発 | 大会会場の視聴者がプレーヤーや関連情報など好きな情報を切り替えて視聴できる技術 | NTTドコモ |
Wi-Fiマルチキャスト技術 | 大会会場内の数百人の観客が持つスマホやタブレットに、大スクリーンに映し出すものとは異なる様々な映像を配信 | NTTデータ |
AIによる対戦動画の解析 | プレー中のハイライトシーンを自動的に抜き出したりスロー再生したりするシステムの開発 | NTTデータ |
ビッグデータ分析やIoT技術 | SAP HANAを使って試合結果やプレー中のデータを分析して選手育成や戦術強化に活用 | 欧州SAP |
スマホ向けの映像配信技術 | 大会やプレーの映像を大規模に配信する基盤システムやアプリの開発 | 米アマゾン・ドット・コム*、CyberZ |
競技者向け高性能PC技術 | グラフィック性能やI/Oを強化したプロセッサーや周辺機器の開発 | 米インテル、米AMD |
NTTデータが準備を進めているのが「Wi-Fiマルチキャスト技術」を使った配信システムだ。Wi-Fiマルチキャストとはアクセスポイント(Wi-Fiルーター)からスマホなどの利用者端末へデータを一方通行に配信する技術。アクセスポイント1カ所当たり100~200台の端末へ同時にデータを配信できる。データ配信に特化しているため、利用者端末からアクセスポイントを介してインターネットなどに接続することはできない。一般的なWi-Fiの通信方式は双方向で、データを同時配信できる端末数は数十台規模だ。