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日本の特許審査の満足度は高い

 この結果、日本国特許庁の特許審査の満足度はおおむね高い。特許審査が行政サービスであることに鑑みると、出色の評価結果であり、特許庁がサービス向上にさまざまな施策を施してきた結果の表れであるとも言える(図4)。

図4●特許審査全般の質についての評価(全体評価)
図4●特許審査全般の質についての評価(全体評価)
〔出所:特許庁の「令和2年度 特許審査の質についてのユーザー評価調査報告書」(令和2年9月)〕
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 もっとも、ある発明を早期に特許化することが好ましいかどうかは状況による。特許権の取得によって権利範囲が確定するので、後発・模倣の立場からすると、どこまで回避すれば特許の権利範囲から逃れて合法的に模倣できるのか、という検討が可能になるからだ。事実、できる限り特許化を遅らせて、後発製品の仕様動向に合わせて特許化していく、というのがこれまで行われてきた実務セオリーである。ただし、資金調達など早期に特許化するための要請が別に存在するスタートアップ企業については、必ずしもそのセオリーに従う必要はないであろう。

中国語の文献が急増

 特許審査にも課題がないわけではない。特許審査官は公務員であるため、定員が決められている。大幅な人員増なくして、年々、技術的に高度化・複雑化する特許審査にどのように対応していくのか、そのために、AI(人工知能)の活用をどのように考えるべきなのか、審査品質をどのように管理維持するのか、など課題を挙げれば枚挙にいとまがない。

 先ほど紹介した各国の特許出願動向から当然に導かれる課題は、先行技術文献の言語問題とも言うべきものである。

図5●世界の特許文献数の推移
図5●世界の特許文献数の推移
(出所:特許庁)
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 技術領域にもよるが、15年ほど前までは、日本語・英語の文献が読めれば審査は成立していた。ほぼ全ての先行技術文献がこれらの言語によるものだったからだ。ところが、この10年、中国語の文献が急増し、現時点ではそれが大半を占めるようになっている。中国語文献を割愛していたら、審査精度の向上は到底望めない。個々の審査官が中国語の読解能力を取得することが現実的ではないとしたら、機械翻訳を活用するしかない。いかに優れた機械翻訳を導入し、AIを活用して審査効率を上げるのか、というのが特許審査における直近の課題となっているのである(図5)。