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もの売りから解析サービスへ転換したX社の事例

 X社の従来のビジネスモデルは、ものづくり(物売り)だ。だが、汎用ばねはコモディティー化しており、利益率が低い(B欄)。とはいえ、X社にはばねの製造設備はあるし、これを稼働させる人員もいる。従って、ものづくりを続けないという選択肢はない。もちろん、高機能なばねにチャレンジすればオンリーワンになることができ、利益率も維持できるだろう。だが、そのような市場は往々にしてニッチであり、売上規模の減少を招いてしまう(C欄)。

 そこで、汎用ばねをIoT化し、納品先(顧客)からばねの使用データのフィードバックを受けて、顧客が現に使用しているばねの状態について解析するサービスを始めることにした(D欄)。すると、顧客に対して次のような解析結果をフィードバックすることが可能になる。「貴社のばね(ID:01234)は想定以上の荷重が想定以上の頻度で負荷されています。従って、5年の設計耐用年数は無理ですよ。設計を変更するか、もしくは1年で定期的にばねを交換することをお願いします」と。なにより、顧客はこのような情報に価値を見い出すだろうから、その価値について課金、収益化するというモデルである。

 ビジネスモデルの転換(B欄→D欄)の態様としては、「ものづくり(物売り)→IoTを使ったサービス化というように異種のビジネスモデル間の転換」でもよいし、小説「下町ロケット」のように、ロケットのエンジンバルブ(第1話)から、その基礎技術を応用して心臓の人工弁を開発製造する(第2話)といったように、ものづくり(物売り)という同一ビジネスモデルを維持しつつ、マーケットを変更するというのでも構わない。

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 ただし、同じマーケット・ビジネスモデルの中で、新機能の追加や新製品を発表するような転換態様は、原則として経営デザインシートの対象外であるため、留意すべきである。

 さて、実際の経営デザインシートを参照すると分かる通り、価値創造メカニズムに関する記入欄は多岐にわたる。もちろん、全ての記入欄に記入する必要はない。それどころか、そもそも経営デザインシートを完璧に作り込む必要すらない。経営デザインシートはあくまでも議論のツールであり、その完成度を競うものではないからだ。むしろ、経営デザインシートを経営者と従業員がそれぞれ作り合い、未完成な状況でそれぞれの考え方について議論して、より完成度の高い経営デザインシートを作り込んでいく。そして、その過程で経営サイドと従業員との意識共有を図るというイメージが、委員会の想定した経営デザインシートの活用イメージなのである。