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競業避止条項で契約違反の恐れも

(3)本来、点Dのような領域について自社が単独で開発すること自体、制約されてはならないはずであるが、形式的には「本開発テーマ」の範囲内になってしまうので、自社単独の成果物だったとしても、共同開発契約に基づいて共有を主張される恐れがある。

(4)本来、点Dのような領域について、第三者と共同開発を行うこと自体、制約されてはならないはずであるが、形式的には「本開発テーマ」の範囲内になってしまうので、共同開発契約に下記のような競業避止条項が存在する場合、契約違反を問われる恐れがある。

甲及び乙は、本契約期間、「本研究」と同一のテーマについて第三者と共同研究を行ってはならない。

 ありきたりの結論で恐縮であるが、結局、共同開発契約における「本開発テーマ」の定義は、ある程度コンパクトに押さえつつも、実際に必要な開発領域を満遍なくカバーするというスタンスが重要である。また、共同開発契約に定められた「本開発テーマ」と実際の開発範囲との乖離(かいり)が明らかになったときは、速やかに「本開発テーマ」の文言について修正をするという前提で運用する必要がある。

 ここで、「本開発テーマ」の記載例を再掲する。

「本開発テーマ」とは、乙が保有するCTスキャン画像に対し、甲が有する機械学習のためのデータ前処理技術を適用し、もって、従来よりも精度のよい画像診断システムを構築する開発を意味し、より詳細には別紙1のものをいう。

 「本開発テーマ」の規定として、「乙が保有するCTスキャン画像に対し、甲が有する機械学習のためのデータ前処理技術を適用し、もって、従来よりも精度の良い画像診断システムを構築する開発」という前段部分のみにとどめるという考え方もあるが、これだけだと上記②(「本開発テーマ」>実際の開発範囲)に該当する恐れがある。そこで、これを防止すべく、後段「より詳細には別紙1のものをいう」という規定を開発の進捗に応じて修正がしやすい「別紙」という形式で設けた。別紙の文言を柔軟に調整できることを確認するために、以下のような条項を契約に含めておくのも1つの工夫となるだろう。

甲と乙は、共同開発の進捗により、「本開発テーマ」の文言が、共同開発がなされるべき範囲と乖離する恐れがあるときは、いつでも、相手方に対し、別紙1の文言の修正について協議を求めることができる。