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リスク回避に向くベンチャー企業のPOC

 先に定義したイノベーションが生まれ得る環境との関係でベンチャー企業を評価してみると、以下のようになります。

[1]ベンチャー企業は、ベンチャーキャピタルやファンドといわれる金融機関から出資を受けるために、日々、マーケティングや事業構想を行い、事業計画を作り続けます。その事業計画の実現可能性が高いと判断されれば出資を受けることができる、というのがベンチャー企業のカラクリだからです。

[2]ベンチャー企業は、他と一線を画す存在でなければなりません。だからこそ、既定路線を否定し、新しい考え方によるビジネスを遂行できるのです。前例がないビジネスを遂行することに対してリスクをとれるとも言えます。こうした企業風土がなければベンチャー企業ではありません。

 つまり、ベンチャー企業にはイノベーションが生まれ得る環境が全てそろっているのですから、ベンチャー企業とはイノベーションを事業化するためのパッケージであると定義づけることができます。

 しかし、ベンチャー企業にも泣き所があります。資本力や体力、信用力、グローバル展開力を持たないことです。では、これらを誰が持っているのか。答えは「大企業」です。ここに、ベンチャー企業と大企業が相互に補完関係であると言われる理由があります。そうだとすると、両者が志を共にし、Win-Win関係を目指すスキームを構築することによって、日本のGDPの維持が可能になるのではないでしょうか。

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 ベンチャー企業がイノベーションを事業化する手法の多くは「プロダクトアウト(Product Out、技術・製品先にありきのタイプ)」ではなく、「マーケットイン(Market In、社会課題に着目して解決するタイプ)」です。解決すべき社会課題を設定したベンチャー企業が、自らのイノベーションによってそれをビジネス的に解決可能なことを小規模ながらも示すことを「プルーフオブコンセプト(Proof of Concept;POC、概念実証)と言います。このPOCを経たビジネスモデルこそが、大企業にとって新規事業のネタとなります。小規模ながらも既にPOCを経ているので、実現可能性も採算性もある程度予測することが可能です。これは、ベンチャー企業のPOCによりリスクがヘッジされた状態であるとも言えます。

 後は、大企業が持つ資本力や信用力、グローバル展開力によって、そのビジネスを大規模化すればよいのです。あたかも、かつて町工場で少量試作した部品を大企業が量産してグローバルに売り出したがごとくです。現状は、ベンチャー企業と投資家がリスクを取ってPOCまで至ったビジネスにすらリスクを取ろうとしない大企業が大半です。しかし、リスクを取らないことは何もしないことと同義であり、それは既存の資産を食いつぶすこと以外の何物でもありません。売り上げの喪失や利益率の低下、優秀な人材の流出を招き、いずれ市場からの撤退を余儀なくされるだけでしょう。

 「オープンイノベーション」は、ベンチャー企業がPOCしたビジネスを大企業がグローバル化する過程で使われるべき手法です。その過程では、大企業は、ベンチャー企業が保有する技術だけではなく、POCしたビジネスを進めるためのノウハウや、POCの過程でベンチャー企業が得た人的ネットワークなどを承継する必要があります。その一つひとつの承継が、大企業にとって「オープンイノベーション」なのです。なお、ここで言う「ノウハウ」とは技術的な知見のみを意味するものではありません。あくまでも、ビジネスを進めるためのノウハウであり、そこには、マーケティングや営業宣伝の手法など、広汎かつ非技術的な要素も含み得るものです。

 ベンチャー企業によるPOCやベンチャー企業が生み出したノウハウを大企業に移植する「オープンイノベーション」。そして、大企業によるビジネスのグローバル化。このプロセスが回り始めたときに、日本は復活への途を歩み出すのです。