21世紀型資本主義と日本
・産業と技術革新の基盤を作ろう(#9)
・働きがいと経済成長を両立しよう(#8)
・海と陸の豊かさを守ろう(#14、15)
・エネルギーをみんなに、そしてクリーンに(#7)
これらの指標の利益を受けるのは株主のみならず、従業員・顧客・社会・市民であることは明らかである。つまり、SDGsは20世紀型資本主義から、21世紀型資本主義である公益資本主義への移行の架け橋たる位置づけを持っている指標なのである。
SGDsのそれぞれの項目は、1人の日本人として見たときにさほど違和感を覚えるものではない。さらにいうと、今まで多くの非上場系オーナー企業に接してきたが、彼らの経営的な考え方は、会社は従業員のもので、従業員が生き生きと働くことによって顧客が満足するという論理を採用している。そして、このような企業の多くは、従業員に雇用機会を、市民に誇りを与え、業績を高水準に維持することによって税収をもたらすという形式で地域社会に総合的な価値をもたらしてきたという方式で、公益資本主義を長らく実践してきたのである。つまり、日本においては、公益資本主義やSDGsの考え方は既に浸透しているのであり、故に、日本は21世紀型資本主義の観点からして先進国の1つであることは間違いない。
他方、20世紀型資本主義に拘泥した多くの上場企業はイノベーティブな気風を失い、苦しんでいるように見える。現象論的に見て、資本主義概念が抜本的な変革を迫られているように感じるのは筆者だけであろうか。
国際的に見て、日本は「忘れられた国である」(Japan Passing)といった論調が気になっている。しかし、もしJapan Passingであれば、インバウンドの旅行者数が毎年最大を更新するはずはないし、その60%以上をリピーターが占めるはずもない。日本には競争力・魅力が存在する。再度、日本の競争力・魅力を見直し、日本の先進性を示す国際指標を作れないだろうか。その指標の鍵となるのは、収益力とか生産性を指し示す20世紀型資本主義の各種指標のみならず、公益資本主義の考え方を踏まえ、SGDsのような具体的基準に準拠した考え方になるような気がしてならない。
そのような指標を提唱することによって、今一度、日本人が日本の先進性を誇りと思えるような気風を作ることが求められているように思うのである。