全2649文字
PR

自然環境を再現した類のないモデル

 同社のシミュレーションでは、集めたデータを基に地形や地質の情報から成るモデルをコンピューター上で構築した。このモデルに雨を降らせることで、地表を流れて地下に染み込み、地盤中を移動して低地で湧き出すといった水の移動を切れ目なく計算する。

水の流れのシミュレーション結果
水の流れのシミュレーション結果
地表水は水色、地下水は黄色で計算結果を可視化した(資料:地圏環境テクノロジー)
[画像のクリックで拡大表示]

 「雨が降れば低地に水が集まる」という自然の現象を正確に再現するため、シミュレーションの前に川や湖など地表水の位置は決めない。初期条件として、水が全く無い地表面に雨が降った場合の水の流れを計算する。計算を続けると、谷地などで水がたまり、流れができる。こうして予測した地表水の位置は、実際の環境とほぼ一致するという。

水環境の再現方法
水環境の再現方法
地下が水で満たされ、地表には水が無い状態のモデルに、雨が降った場合を仮定して計算し続ける。地表と地下の水が平衡状態となり、水が集まりやすい谷地などで自然と川が形成される(資料:地圏環境テクノロジー)
[画像のクリックで拡大表示]

 「地表と地下の水の流れを一体化して解析することで、地下水の流れを高精度で予測できるようになる。こういったシミュレーションシステムは世界でも珍しい」と田原社長。従来では、環境に関するデータを収集する手間がかかるのに加え、情報量や計算量が膨大になるため、広域での水循環の計算は難しいとされていた。

シミュレーションで計算する水循環の過程
シミュレーションで計算する水循環の過程
地圏環境テクノロジーのシミュレーションシステム「GETFLOWS(ゲットフローズ)」では、地表水と地下水の流れを一体化して計算する。水や熱、土砂の動きも含めて解析している(資料:地圏環境テクノロジー)
[画像のクリックで拡大表示]

 地下水の数値解析では一般に、川や斜面などの地表面を分割して簡略化する。地表から地下へ浸透する水の量は、分割したパーツごとに地質などの条件から設定する一定の係数に基づいて算出している。

 小さいパーツに切り分けると計算量が少なくなる一方で、地表と地下を流れる水の広域での相互作用を再現できない。また、川の流域や地形に沿って分割するので、地表で水が流れる位置は固定される。川が氾濫する場合は定めた流域の外に水があふれることになるため、計算は困難だった。

 加えて、地表と地下を移動する水の割合は、土壌の水分量などによって変わる。同社のシミュレーションでは、係数で割合を決めずに、時々刻々と変化する気候や土壌の条件などからコンピューターが判断するようにした。