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企業変革の目的は成果を出すこと まずは古い仕組みを変えていく

 東西冷戦の終結を境に、世界経済や社会の状況は大きく様変わりした。近年では世界的な大企業も往年の輝きを失う一方で、新興のデジタル企業が急速に台頭している。このようにゲームが変わってしまった以上、もはや変革を遂げられない企業が生き残ることはできない。

 2009年にカルビーの会長兼CEOに就任した際にも、まず着手したのが古い仕組みと悪しき文化を変えていく取り組みだった。自らその範を示すべく、私自身も率先して権限、個室、社用車、接待費などを捨てた。

 企業が変革に取り組む目的は、「成果を出すため」の一点に尽きる。ここで重要なポイントは、まず仕組みから変えるということだ。経営がうまくいかない企業では、往々にして人から手を付けたがる。しかし、適切な仕組みさえ最初に作れれば、組織も人も自然とうまく回り出すものだ。年がら年中人事ばかりやっていても、決して状況が好転することはない。

 カルビーでも仕事の棚卸しを行い、その内容に応じて「良いことだから続ける」「良いことだができていない」「すぐにやめた方がいい」の3種類に仕分けした。良いことを続けることも重要だが、変革を成し遂げる上では、やめるべきことを早くやめる方が大事である。

 以前のカルビーは「暖かいが甘い会社」だったが、私はこれを「厳しいが暖かい会社」に変えたいと考えた。「厳しい」の意味するところは、徹底した成果主義だ。成果で公平に評価される体制がないと、好き嫌いで人事が左右されるような事態を招くことになる。一方、「暖かい」というのは、一人ひとりの社員が成果を出すための環境・制度をきちんと整備することを指す。簡素化・透明化を徹底し、人材育成や給与体系も見直した。これにより、既存の仕組みや文化を変えることを目指したのだ。

オフィス環境を抜本的に変革 ダイバーシティも積極的に推進

 変革の実現に向けて、オフィス改革やダイバーシティにも積極的に取り組んだ。以前本社は9階建ての自社ビルだったが、フロアが分かれていると部門間の交流は生まれない。そこで広いスペースが確保できる別のオフィスに移転し、フリーアドレス制度も導入した。

 ここには個人席はもちろんのこと、役員個室も会議室も存在しない。着席場所は出社時にICカードで決められ、最大5時間でまた別の席に移動する。こうすることで自然と社内のコミュニケーションも促進される。個人持ちの荷物などを置いておくスペースもないため、終業時にはいつもオフィスがきれいに片付いている。そもそもオフィスは考えるための場だ。常に整理整頓されたクリーンな環境でないと、決して良い知恵も出てこない。

 ダイバーシティについては、本社、支店、営業所、工場など、すべての拠点にダイバーシティ委員会を設置した。

 戦前・戦後から冷戦終結ごろまでの日本は、女性が社会で活躍するのは難しい状況にあった。しかし現在では、高学歴化も進み、男女雇用機会均等法などの法制度も整備されている。少子高齢化などの問題に直面するなか、ダイバーシティはまさに日本再生に向けた大きなドライバーだ。従来のような、「大卒日本人男性」中心の考え方で、これからもやっていけるとはとても思えない。

 その点、典型的な日本企業でもあるカルビーが、目覚めてくれたことは非常によかった。現在では「カルビーダイバーシティ宣言」のもと、社員の多様性を成長に生かすための様々な取り組みを進めている。その結果、5年連続「なでしこ銘柄」に選定され、「新・ダイバーシティ経営企業100選・100選プライム」にも選ばれた。現執行役員14名のうち6名が女性で、2020年までに女性管理職比率30%を目指す「にいまるさんまる」の達成も間近となっている。

古き労働慣行を徹底的に打破し ワークライフバランスを最大化

 ただし、ダイバーシティを推進する上では、働き方改革にも同時並行で取り組む必要がある。かつての日本企業において、成果は時間に比例していた。長時間頑張って仕事をすることが、労使のどちらにとってもよかった。しかし、もはやそうした時代ではない。

 「今何をしているのか」と問われて、「モノを作っている」「開発している」「売っている」と即答できないのなら、それは働いていることにはならない。私たちには顧客・取引先、従業員とその家族、コミュニティ、株主など様々なステークホルダーがいる。その人たちが抱えている問題を解決するということが、働くということなのだ。

 カルビーの働き方改革でも、「長きを以て貴しと為さない」と言い続けてきた。会社が求めているのは、時間ではなく成果である。残業代相当の手当は別に増やすから、ムダに会社にいるなと指示した。こうした取り組みでは、しばしば上司が問題となる。つまらない会議や資料作りをさせるから、大事な部下の時間が奪われることになる。「No Meeting,No Memo」を徹底し、できるだけ早く帰れるようにすることが肝心だ。そうすれば家族と過ごす時間も増えるし、自己研鑽のための学びに充てることもできる。

 古き労働慣行が、人と会社と国をダメにしてきた。しかし、働き方を変えれば、生き方が変わり、会社が変わり、人生が豊かになる。冒頭にも述べた通り、世界は大きく変わりつつある。そうした動きに対応していくことが、これからの日本企業には強く求められている。