好業績を続けるダイキン工業が、国内で25年ぶりにエアコンの新工場を建設して2018年6月から稼働を開始した。業務用エアコンのマスカスタマイズ生産を行う工場だ。それを支えるのが、最新の生産技術とIoT(Internet of Things)。まずは新工場に投入された生産技術の詳細に迫る。
ダイキン工業の新工場「堺製作所 臨海工場 新1号工場」(堺市)は、材料から部品づくり、組み立てまでを一貫して行う工場だ(図1)。個々の顧客のニーズに応じた多種多様な製品を、大量生産並みのコストに抑えて造る「マスカスタマイズ生産」を可能にしたことが、最も大きな特徴である。それを実現すべく、同社は最新鋭の生産技術を新工場に投入した。
異なる室外機を1つずつ造るためのポイントは、組み立てラインのレイアウト、ワークを載せるパレット、標準化したロボットによる部品の組み付け、熱交換器を造る接合炉、部品を組み立てる場所を兼ねる無人搬送車(AGV)、プレス工程や塗装工程の自動化など多岐にわたる。1台の室外機を組み上げる時間(工場内リードタイム)は約4時間。生産性は従来の1.5倍に高めているという。
「フィッシュボーン」形のレイアウトで負荷分散
新工場はまず、生産ライン全体のレイアウトに特徴がある。魚の骨の形、いわゆる「フィッシュボーン」形のレイアウトにしたことだ。メインラインである室外機の組み立てライン(以下、組み立てライン)を魚の背骨(脊椎骨)のように中央にまっすぐ伸ばし、その左右に各部品を造る工程(サブ工程)を設置。背骨(組み立てライン)に対して肋骨(横)からそれぞれの部品を供給する仕組みである。
マスカスタマイズ生産に対応するために、新しい生産ラインは1台ずつ性能などが異なる室外機を造れる「1個流し生産」を実現している。フィッシュボーン形の採用は、室外機を組み立てるラインを最も効率良く流し、かつ1個ずつ異なる部品を最短経路で組み立てラインに供給することを考えた結果だ。つまり、1台ずつ異なる仕様の室外機を造り分ける負荷を、小回りの利くサブ工程で吸収させ、メインの組み立てラインには大きな負荷をかけないコンセプトである。この工夫がマスカスタマイズ生産を行う上で大切だという。
具体的には、直線状に伸びた長さ120mの組み立てラインの周囲に、[1]圧縮機、[2]配管、[3]熱交換器、[4]ファン組み立て品(以下、ファンアッシー)、[5]電装品、[6]板金部品、の6つの部品を造る工程があり、出来た部品をそれぞれ組み立てラインに投入し、室外機を組み上げていく(図2)。