部品と製品の正しい組み合わせを確保できる理由
リークテストで合格したら、続いて[5]の真空引き工程に移る。この工程も検査モジュールを使う。ここは、本物の冷媒を熱交換器と圧縮機の配管の中に注入する前に、真空ポンプを使って配管内を真空(低圧)にする(図10)。
必要な真空度をあらかじめ設定しておき、その値になるまで圧力を下げていく。ここでも、IoTを活用し、生産ラインを流れるさまざまな製品の真空引きのデータを蓄積する。これを利用し、真空引きに関する傾向などを把握すれば、今後の改善などに生かせるという。
真空引き後は、[6]の冷媒充填工程で、配管の中に冷媒を注入する。この工程も検査モジュールで構成した(図11)。
こうして室外機の心臓部である熱交換器と圧縮機が完成したら、次に[7]の第2組立工程で他の部品を組み付ける。組み付けに要する部品は部品箱に入れてサブラインから(メインラインに対して横から)供給する。供給場所は、第2組立工程の入り口だ。ここで、前工程から流れてくる、熱交換器と圧縮機を載せたパレットと部品箱が合流する(図12)。大切なのは、正しい部品を供給することだ。そこで、合流地点に作業者を配置し、部品箱側のバーコードとパレット側のIDカードを照合させている。こうして「OK」という音声が流れた部品箱だけを第2組立工程に流すことで、部品箱とパレットの正しい組み合わせを確保している。
続く第2組立工程は5つの搬送モジュールから成る。各作業者はパレットとセットで流れてくる部品箱からファンや筐体(きょうたい)といった部品を取り出し、1個ずつ製品に組み付けていく(図13)。
製品を組み上げたら、[8]の運転検査工程に進む。ここも検査モジュールでできた工程だ。運転検査といっても、機能を検査するわけではない。というのは、製品の性能は開発段階で確立済みだからだ。この工程では、製品としてのばらつきを見て、それが許容範囲に収まっていることを確かめるのである(図14)。
運転検査を終えると、[9]の最終リークテスト工程に移る。これは、運転検査で配管内を冷媒が循環した後でも、冷媒の漏れがないことをもう一度確認する工程だ(図15)。
これで問題がなければ、製品は完成。[10]の梱包・出荷工程に進み、工場を出て市場へと運ばれていく(図16)。ここは日本工場とインド工場で大きな差がある所だ。日本の工場では梱包後の製品を空中搬送でダイレクトに出荷する設備を導入し、完全自動化を図っている。だが、インド工場では人手の工程だ。一旦台車に梱包後の製品を載せ、そこから作業者が運搬補助機を使って搬送して出荷する仕組みとなっている。これはインドの労務費が日本に比べて1/10と低く、自動化設備を使うよりも製造コストを抑えられるからである。
設備モジュールを使ってシンプルに生産ラインを造り、随所にミスを防ぐ工夫と最先端技術を盛り込んだ生産ライン。それをインドのような新興国に真っ先に惜しみなく投入するのが、グローバル競争時代を勝ち抜く秘訣だとダイキン工業は考えている。