全5051文字
PR

システム化の押さえどころ

 システム化に向けた第1のポイントは、自社の商材を核として効果的な周辺部品の取り込み範囲を規定することにある。機能・構造の設計の改善に寄与しないものをいたずらに取り込むことは、ともすれば組み立て工程の代行になりかねず、付加価値を高める観点からは避けるべき悪手になる。機能・構造設計の効率化に寄与し、顧客ニーズにかなう範囲を的確に見極めることが重要となる。

 ここで、機能の効率化に向けたM&A(企業の合併・買収)や提携による代表的な取り組み事例を紹介する(図1)。

図1 協業・連携・買収によるモジュール化・システム化の事例
図1 協業・連携・買収によるモジュール化・システム化の事例
[画像のクリックで拡大表示]

 クルマの知能が高度化する環境下では、制御・通信の連携対象部品、及び連携の要素技術となるセンシング、制御、アクチュエーション、通信技術を強化し、システム化を進めることが主なアプローチとなる。また、構造設計の効率化の観点からは、クルマの電動化・知能化で車両スペースがひっ迫し、小型・軽量が強く求められる。一体成形や異種材料接合など、ハードウエアの統合化技術を手の内化し、自社商材の周辺に空間的に接合する部品をコンパクトにシステム化することが重要となろう。

 いずれの観点からシステムの効率化を進めるにしても、システム化に取り組む先行プレーヤーや新規参入プレーヤーが想定されるため、自社商材がシステムにおいて核となり、他社と差異化できる範囲にとどめることは競争軸の観点から重要である。

 第2のポイントは、システム化の実現に向けた社内関連組織、外部連携先の明確化にある。システム化に向けては1つの事業部門に閉じた技術・事業基盤では対応しきれない。足りない能力の補完に向けて社内の関連部門の巻き込みや、社外の有力なプレーヤーとのM&Aや協業体制構築を視野に入れた柔軟なアプローチが必要となる。

 第3のポイントは、組織横断で連携を進める事業体制を、KPI(Key Performance Indicator:主要業績評価指標)の設定や組織体制の見直しを含めて規定することにある。社内外の事業部門横断の連携加速というと聞こえは良いが、実情としては各事業部門のPL(損益計算書)の管理責任に引きずられ、事業部門間の連携は形骸化する傾向が強い。

 それを防ぐために、事業部門を横断する連携活動を正式な組織活動として、専任組織として期間限定で構築する、あるいは具体的な成果目標を課し、成果に応じた評価系を既存事業の活動とバランスをとって規定することが求められる。またシステム化を事業の中核に据えるべく、既存の事業部門で関連部門を束ねたり、システム事業本部として組織体制を刷新したりすることも有効な手段となる。

 最も重要な第4のポイントは、システム化事業に取り組むことの必要性・意義を全社で共有化し、全社を挙げて取り組みを本格化することにある。システム化を進めることは、既存事業の顧客と競合関係になるリスクをはらむ。

 既存事業の存続を優先するのか、既存事業に負の影響があり得るとしてもシステム化を事業の柱と据えるのか。どちらに重点を置くのかを対象事業の特性や将来性を踏まえて明確化し、システム化への取り組みの注力度を経営方針として明文化しておかないと、既存事業もシステム化も中途半端な立ち位置となり、経営悪化を招く。